2016 6.2 thu., 6.3 fri., 6.4 sat.
MIKE STERN TRIO with special guest KAZUMI WATANABE
artist MIKE STERN , 渡辺香津美
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
ギター・フリーク垂涎のプログラムが始まりました。マイク・スターンと渡辺香津美の共演です。ベースは超絶技巧の気鋭テイモア・フェル、そしてドラムスは復調した重鎮デニス・チェンバース。ライヴにいらしたお客様からは多数、「元気を取り戻したデニスに会えてうれしかった」という意見が寄せられているとのことです。
マイクと渡辺は同い年です。渡辺は'80年に歴史的名盤(といっていいでしょう)『トチカ』をリリースします。ここでベースを弾いていたひとりがマーカス・ミラーです。そして翌年春、自身のバンドでニューヨークのクラブ「セヴンス・アヴェニュー・サウス」に出演します。そこには、カムバック直前のマイルス・デイヴィスが"見定め"に来ていました。マイルスは、マイクとマーカスが参加した新バンドを率いて同年6月に復帰後の公式初ライヴを行ないます。マイクはそれまで"ブラッド、スウェット&ティアーズ"や、タイガー大越の"タイガーズ・バク"などで演奏していましたが(たしかビル・フリゼールの後任)、マイルスと出会ったことで知名度を一気に広げ、トップ・ギタリストのひとりとして注目されるようになりました。マイルスのところを離れたマイクはジャコ・パストリアスのバンドに加わりますが、'83年の来日ツアーには参加できませんでした。彼は替わりに渡辺を推薦、その公演の模様は現在、アルバム『WORD OF MOUTH BAND 1983 JAPAN TOUR featuring KAZUMI WATANABE』で聴くことができます。
近い場所にいたマイクと渡辺ですが、本格的なセッションが実現するまでには思いのほか時間がかかりました。そして、4月にリリースされた渡辺のギター45周年記念アルバム『ギター・イズ・ビューティフル KW45』でついに共演。この時の成果が、今回のライヴへとつながるのです。オープニングは「Out Of The Blue」。途中にブルース形式を挟んだユニークな曲で、しょっぱなからマイクがロング・ソロを繰り広げます。「ここまで弾きまくるのか」というほどプレイし、会場を盛り上げに盛り上げた後、渡辺にソロをゆずります。後ろのリズムは4ビートに変わっています。間を重視しながら、最初はクリーンなトーンでオクターヴ奏法をまじえつつ、後半はエフェクターを踏み込んで自由奔放に弦をかき鳴らします。つづくテイモアの6弦ベース・ソロも"勢いが止まらない"という感じ、とんでもない速弾きを交えながら、ギタリスト二人に負けないほどの歓声を引き出します。彼は1987年にアゼルバイジャンで生まれ、'90年にイスラエルのハイファに移住。13歳からエレクトリック・ベースを始め、2010年からニューヨークの音楽シーンで活動しています。この公演で、テイモアの技巧と音楽性は日本でも知れ渡ることになるでしょう。曲の後半ではマイク→デニス→渡辺→デニスというかけあいパートも用意され、しばらく休養していた(日本公演もごぶさただった)デニスが第一線に戻ってきたことを、目と耳で確認することもできました。
ちょっとマーカスがマイルスに書いたナンバー「TUTU」を思わせる「Avenue B」ではツイン・ギターだけで演奏する(ベースとドラムが加わらない)パートも用意され、「All You Need」ではマイクがリチャード・ボナばりに自身の歌声を楽器演奏に重ねます。「Tipitinas」のテーマ・メロディにおける息の合ったユニゾン、ジミ・ヘンドリックスの古典「Red House」(マイクがヴォーカルをとります)におけるマイクと渡辺それぞれの個性的なブルース・アプローチも、実に大きな聴きどころとなりました。「Big Neighborhood」ではマイクと渡辺が横並びでバトルを展開。チョーキングを交えたマイク、アーミングを用いてアグレッシヴに攻める渡辺、ふたりの笑顔がセッションの成功を物語ります。これぞまさしく、"ギター・ブラザーズ"。その言葉にふさわしいライヴでした。公演は4日まで続きます。
(原田 2016 6.3)
Photo by Yuka Yamaji
2016 6.2 THU.
1st | |
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1. | OUT OF THE BLUE |
2. | AVENUE B |
3. | ALL YOU NEED |
4. | BIRD BLUE |
5. | TIPITINA'S |
6. | RED HOUSE |
EC. | BIG NEIGHBORHOOD |
2nd | |
1. | ONE LINERS |
2. | YOU NEVER KNOW |
3. | THAT'S ALL IT IS |
4. | WHAT MIGHT HAVE BEEN |
5. | CHROMAZONE |
EC. | RED HOUSE |