2016 6.13 mon., 6.14 tue.
The EXP Series #07 / THE SUFFERS
artist THE SUFFERS
ブルーノート東京が期待の新鋭を紹介する〈The EXP Series〉の第7弾アクトとして登場したのは、2011年に結成され、今年3月にデビュー・アルバムをリリースしたサファーズ。10人編成のミクスチャー系ソウル・バンドで、今回が初来日。パワフルな女性シンガーをリードに据え、ホーン隊含む大所帯で古き良き時代のソウルやファンクをやるスタイルはシャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングスを思わせるが、テキサス州ヒューストン出身の彼らはガルフ・コースト・ソウル(ガルフ・コーストとは米南部のメキシコ湾に接する地域)を標榜し、少し南国の薫りがするおおらかさが魅力となっている。
今回はバック・ヴォーカル含む9人での登場となったが、メンバーがステージに上がると、「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイヴ......」と点呼した後、アルバム・ジャケットよろしく全員が両手を上げて叫ぶお約束の儀式でライヴ開始を宣言。まずはアルバムでも冒頭を飾っていた"Make Some Room"で、全員がステップを踏むように体を揺らしながら、ゆったりとグルーヴを紡いでいく。リーダーのアダム・カスタネーダのベースを中心としたリズム隊と2管ながら迫力のあるホーン隊が繰り出す音は実に分厚く、その音色には南部らしい湿気も滲む。茶色のアフロヘアを揺らして歌うのは、紅一点で存在感抜群のカム・フランクリンだ。
23歳で夭折した"テハーノの女王"ことセレナ(テキサス出身)の名唱で知られる"Baila Esta Cumbia"をやったのは、メンバーにラティーノを含むからでもあるのだろう。そこから"Dutch"へと続く展開もお見事で、チャーミングな表情を見せながら聖歌隊出身者らしいディープな声で情感たっぷりに歌い上げるカム・フランクリンは70年代サザン・ソウルの歌姫のよう。まさに見た目とヴォーカルが一致するタイプのシンガーだ。その歌声は"Stay"や"Peanuts"といったグルーヴィなソウル・ナンバーでも十分発揮されたが、特にスロウ・バラード"Giver"の終盤で歯止めがきかなくなったようにアドリブで絶唱する姿には100%の本気を感じた。
カムはMCで何度も「私たちの名前は?」「私たちの出身は?」と客席に問いかけ、出自を強調。レゲエ・タッチの"Good Day"ではサファーズというグループ名が映画『Rockers』(78年)劇中のセリフに因んでいることを思い出させたが、続くR&Bメドレーでエリカ・バドゥ(テキサス州ダラス出身)の"Back In The Day(Puff)"をベースにしていたあたりにも地元愛を感じたし、様々な音楽をシームレスに繋いでいくミクスチャー感覚に改めて彼らの懐の深さを感じた次第。アンコールでは粘っこいファンクで総立ちの客席を踊らせ、最後までライヴ猛者ぶりを見せつけた。
そんな彼らのパフォーマンスを観ていて思い出したのが、かつてヒューストンから登場したアーチー・ベル&ザ・ドレルズの"Tighten Up"。あの"ガルフ・コースト"なグルーヴをストレートに受け継いだのがサファーズなのではないだろうか。
(2016 6.14)
text : 林 剛
1970年生まれ。R&B/ソウルをメインとする音楽ジャーナリスト。各所で執筆。昨年~今年出したディスクガイド(ディアンジェロを軸にした『新R&B入門』、マイケル・ジャクソンを軸にした『新R&B教室』)も好評発売中。
Photo by Tsuneo Koga
2016 6.13 MON.
1st | |
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1. | MAKE SOME ROOM |
2. | BAILA ESTA CUMBIA |
3. | DUTCH |
4. | MIDTOWN |
5. | DO WHATEVER |
6. | GOOD DAY |
7. | R&B MEDLEY |
8. | BLUES EYE RAID |
9. | SLOW IT DOWN |
10. | STAY |
11. | GIVER |
12. | PEANUTS |
EC1. | WHO'S GONNA LOVE YOU |
EC2. | EVERYTHING THERE |
2nd | |
1. | MAKE SOME ROOM |
2. | GOOD DAY SUITE (MEDLEY) |
3. | DUTCH |
4. | MIDTOWN |
5. | GWAN |
6. | GIVER |
7. | STAY |
8. | DO WHATEVER |
9. | PEANUTS |
EC1. | WHO'S GONNA LOVE YOU |
EC2. | EVERYTHING THERE |