2016 6.27 mon.
The EXP Series #06 / SHUN ISHIWAKA CLEANUP TRIO meets KURT ROSENWINKEL
artist KURT ROSENWINKEL , 石若駿
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
音楽の明日を担うドラマーのひとり、石若駿が遂にリーダーとしてブルーノート東京に登場しました。2011年5月には大黒摩季のバックで出演したことがありますが、今回はジャズです。自身の"クリーンナップ・トリオ"にカート・ローゼンウィンケルを迎えた、1日限りのスペシャル・ライヴに胸が高まります。
出身はジャズ・ミュージシャンの名産地といえる北海道。12歳の頃から日野皓正と共演し、その才能は日野の自伝「逆光」でも賞賛されています。札幌ではハービー・ハンコック、マーカス・ミラーらのオープニング・アクトを務め、2015年に東京藝術大学打楽器科をトップの成績で卒業しました。ぼくのように何十年もジャズを追っている者は"藝大の打楽器科"というだけで白木秀雄や森山威男の名を思い浮かべ、"十代の頃から第一線で活躍"というフレーズをきいただけで富樫雅彦、奥平真吾、本田珠也など歴代の天才ドラマーのプレイが頭に鳴り響きます。ぼくは今回、いろんなウェブサイトにアップされている石若のインタビューを読んでからライヴに向かったのですが、とにかく感性が柔軟で話に広がりがあるひと、という印象を受けました。そこに抜群のテクニックと作曲能力が加わるのですから、鬼に金棒でしょう。しかも昨年12月にリリースした初のフル・リーダー・アルバム『CLEANUP』は「JAZZ JAPAN AWARD」「jazzlife DISC GRAND PRIX」を獲得し、さらに石若個人も「ミュージック・ペンクラブ音楽賞 新人賞」に輝いています。権威ある、伝統的なメディアも、彼のアートをしっかり認めているわけです。
「プログラムの途中あたりからカートが加わるのかもしれないな」と思っていたのですが、とんでもない。1曲目「Cleanup」から石若、カート、井上銘、須川崇志が一体となったプレイが繰り広げられました。「もうこのメンバーで何年も一緒にツアーしてきたんだよ」といわれても疑いが持てないほどアンサンブルはよくまとまり、ソロも快調に続きます。ベースの背後で光るブラッシュの妙技、ギタリストふたりとの8バース(ソロ交換)における歌うようなドラム・ソロ。石若の"ただものでなさ"が発揮されます。富樫雅彦の「Waltz Step」をとりあげるセンスの良さはもちろん、ミステリアスな部分を井上、よりメロディアスな部分をカートが担当した意欲的な自作「The Boomers」、組曲風の構成で迫る「Big Sac」と、演奏レパートリーはどれも時間を忘れさせるものばかり。オーラスではチャーリー・パーカーが1951年に書いた古典「Au Privave」がプレイされましたが、カートはスキャットとギターをダブらせながらの熱演。'90年代初頭、彼がポール・モチアン"エレクトリック・ビ・バップ・バンド"の一員としてプレイしていた頃を彷彿とさせる、鋭くてクールなカートなりの"モダン・ジャズ"に酔いしれました。
4者のステージは大成功に終わりました。そしてカートは7月2日と3日に、自身のトリオで「コットンクラブ」に登場します。フレーズの組み立て、作曲能力、エフェクターの用い方など、彼こそ現代ジャズ・ギターの"長兄"であり、オピニオン・リーダーであるとぼくは確信しています。カートの音楽世界を、ぜひ「コットンクラブ」でお楽しみください。
(原田 2016 6.29)
Photo by Tsuneo Koga
2016 6.27 MON.
1st | |
---|---|
1. | CLEANUP |
2. | TAIJI SONG |
3. | WALTZ STEP |
4. | THE BOOMERS |
5. | CHELSEA BRIDGE |
6. | BIG SAC |
EC. | AU PRIVAVE |
2nd | |
1. | CLEANUP |
2. | TAIJI SONG |
3. | WALTZ STEP |
4. | THE BOOMERS |
5. | WHEN SUNNY GETS BLUE |
6. | UNTITLED No.1 |
7. | BIG SAC |
EC. | EVIDENCE |