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AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER

artist WILL LEE , 矢野顕子

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


今年もこの季節がやってきました。矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカーの、不動の黄金トリオによる公演です。見れば見るほど、聴けば聴くほど面白いのが彼らのパフォーマンスです。「今回はどの曲を、どんなふうにプレイしてくれるんだろう」とワクワクしながら、ぼくはいつも会場への道を急ぐのです。

3人は沖縄から公演をスタートし、昨日からブルーノート東京のステージに立っています。ウィルは前乗りして来日し、石垣島でダイビングを満喫したとのこと。画家としても著名なクリス(その作品はクロークで販売されています)は今回もたくさんの絵を描いているとのことです。オープニング・ナンバーは2015年のアルバム『Welcome to Jupiter』から「そりゃムリだ」。ウィルはベースを弾かず、シンセサイザー、コーラス、フィンガースナップ(指パッチン)で彩りを加えます。続く「自転車でおいで」は'87年のアルバム『グラノーラ』に入っていました(佐野元春とのデュエット)。この日ではクリスのブラッシュ・ワーク、ウィルの口笛とベース・ソロのオクターヴ・ユニゾンを加えたアレンジが耳を奪います。次の曲は、"ウィルの歌が聴きたい"という矢野自身のリクエストにより、「Georgy Porgy」。TOTOの代表曲であり、エリック・ベネイの愛唱曲としても知られるナンバーを、ウィルはファルセットも交えながらセクシーに歌い込みます。3台のスネア・ドラムを使い分ける(1台は布でミュートしていました)クリスのドラム・プレイも、まさしく匠の技です。

ニューオリンズR&Bの名匠、ヒューイ・ピアノ・スミスのヒット曲「Rockin' Pneumonia and the Boogie Woogie Flu」では、途中で「Firecracker」もたっぷり挿入されました。ハワイを拠点に活動したピアノ奏者マーティン・デニーが1959年に発表した、日本では約20年後、YMOが演奏したことで広く知れ渡るようになったナンバーです。こうした"合わせ技"はこの夜、もうひとつ聴くことができました。「ゴジラ」と「モスラの歌」のメドレーです。伊福部昭が書いたインストゥルメンタル曲である前者では3人の技がぶつかりあい、かつてザ・ピーナッツがインドネシア語で歌った後者も"矢野顕子節"によってワン&オンリーにリメイクされます。'70年代に知己を得たというマエストロ・冨田勲(この5月に亡くなりました)の「新日本紀行」に詞をつけた「やめるわけにゃいかないわ」が聴けたのも、当夜の収穫でした。初出は'78年のアルバム『ト・キ・メ・キ』。ループを使ったベース・ソロ、歌うようなドラム・ソロもたっぷりフィーチャーされました。

後半では、"もう何度もこのトリオで取り上げていると思っていたが、実はやっていないことがわかった"という前置きから「ひとつだけ」を披露。続いてはウィルがヘヴィ・メタルのギタリストのような音色でベースをかき鳴らします。楽器を放り投げたかと思うとすかさずキーボードの席に移り、始まったのは「在広東少年」。3人による音の会話は、とどまるところを知りません。この2016年は、矢野顕子のソロ・デビュー40周年にあたります。そんなアニヴァーサリー・イヤーを、黄金トリオはいっそう多彩で充実したパフォーマンスで飾ってくれました。ライヴは20日まで続きます。猛烈に必聴必見です。
(原田 2016 8.17)

Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2016 8.16 TUE.
1st
1. そりゃムリだ
2. 自転車でおいで
3. ジョージー・ポージー
4. Rockin' Pneumonia ~ Boogie Woogie Flu ~ Fire Cracker
5. やめるわけにゃいかないわ
6. ゴジラ vs モスラ
7. ラーメンたべたい
EC1. ひとつだけ
EC2. 在広東少年

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