2016 9.2 fri., 9.3 sat.
JACOB COLLIER presented by Quincy Jones Productions
artist JACOB COLLIER
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
衝撃の初来日からちょうど半年。オーディエンスの目を点にした、驚異のワンマン・パフォーマンスが東京に戻ってきました。ジェイコブ・コリア―、待望の再登場です。
英国ロンドン生まれの彼は、今年22歳。YouTubeにアップされた多重録音によるアカペラ・ヴォーカル+楽器演奏のパフォーマンスで世界的な注目を集め、クインシー・ジョーンズ、ジェイミー・カラム、パット・メセニー、ハービー・ハンコック、ブルーイ(インコグニート)らが絶賛。人気バンド"スナーキー・パピー"とのコラボも評判を集めました。ファースト・アルバム『In My Room』(クインシーのレーベル"Qwest"からの発売)が国内登場したばかりという、絶好のタイミングでの来日です。
ステージには前回同様ドラムス、パーカッション、5弦エレクトリック・ベース、2台のシンセサイザー、ハーモナイザー(声をハーモニー化する)、アコースティック・ピアノ、エレクトリック・アップライト・ベースが並びましたが、今回はさらにアコースティック・ギターとメロディカ(ピアニカ)が、ラインナップに加わりました。それぞれの楽器の間を軽快に動き、次々と持ち替えながら歌ったりプレイを続けていくジェイコブ。聴いても見ても衝撃的なパフォーマンスです。従来の"ワンマン・オーケストラ"や"マルチ・ミュージシャン"とは、次元が違うといっても過言ではないはずです。背後にはいうまでもなくテクノロジーの目覚ましい進化があるのですが、それをどう操るかは音楽家のセンスにかかっています。ジェイコブはそのセンスに富み、しかも観客を熱狂させる術を心得ているのです。
スティーヴィー・ワンダーの名曲「Don't You Worry 'Bout A Thing」、カーペンターズで有名な「Close To You」をジェイコブ流に塗り替えた後は、自作のバラード「Hideaway」。ハーモナイザーの使用を抑え、前半をギターの弾き語り、後半をピアノの弾き語りで聴かせます(ギターとピアノを同時に演奏する箇所もありました)。役者が舞台上で用いるようなヘッドセット・マイクをつけて、ジェイコブは幅広い音域を使ってドラマティックに歌い上げます。
ファンキーな自作「Saviour」は、オーディエンスの歌声との共同作業で綴られました。スクリーンには歌詞が映し出され、ジェイコブは客席を二つに分けて、それぞれ別のパートを歌うようにうながします。その2つのパートがコール&レスポンスのように響く中を、ジェイコブのリード・ヴォーカルが突き進んでいくのです。この趣向は前回の来日の時にはありませんでした。
ジョージ・ガーシュウィン作「Fascinating Rhythm」(1924年、つまり今から92年前に書かれた曲です)を徹底的にダンサブルにリメイクした後、ステージから降りたジェイコブですが、当然ながらファンの声援はやみません。戻ってきた彼は、驚きのスペシャル・ゲストをアナウンスします。なんと、公演を見に来ていた巨星ハービー・ハンコックが客演することになったのです。演目は「Georgia on My Mind」。僕の知る限りハービーがこの曲を演奏した記録は、ウェス・モンゴメリーのアルバム『ダウン・ヒア・オン・ザ・グラウンド』(1967年)しかありません。アコースティック・ピアノによるハービーの繊細な伴奏、そしてジェイコブの歌とメロディカ。大変貴重な、世にも珍しいサプライズを一音も聞き逃すまいと客席は静まり返り、演奏が完全に終了すると、怒涛のようなスタンディング・オヴェイションが起きました。ライヴならではのハプニングと解放感。本日もジェイコブは驚きのステージを繰り広げることでしょう。
(原田 2016 9.3)
Photo by Takuo Sato
2016 9.2 FRI.
1st | |
---|---|
1. | DON'T YOU WORRY 'BOUT A THING |
2. | CLOSE TO YOU |
3. | HIDEAWAY |
4. | DON'T YOU KNOW |
5. | IN MY ROOM |
6. | SAVIOUR |
7. | FASCINATING RHYTHM |
EC. | CRAZY SHE CALLS ME |
2nd | |
1. | DON'T YOU WORRY 'BOUT A THING |
2. | CLOSE TO YOU |
3. | HIDEAWAY |
4. | DON'T YOU KNOW |
5. | IN MY ROOM |
6. | SAVIOUR |
7. | SMILE |
8. | FASCINATING RHYTHM |
EC. | GEORGIA ON MY MIND (Duet with Herbie Hancock) |