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ANDRA DAY @Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2016

artist ANDRA DAY

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


昨年、アルバム『Cheers To The Fall』で鮮烈なメジャー・デビューを果たした超実力派シンガー、アンドラ・デイの「ブルーノート東京」公演が19日と20日に行なわれます。彼女は17日に横浜赤レンガパーク野外特設ステージで開催された「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」にも登場。ジョージ・ベンソンの後、アース・ウィンド&ファイアーの前という、彼女が生まれる遥か前からスターダムにいる大御所に挟まれた登場順であったにもかかわらず、コクのある歌声、磨き抜かれたサウンド・メイキング、様式美さえ感じさせるパフォーマンスで満場を唸らせました。「なるほど、これだけ歌えて華があればスティーヴィー・ワンダー、エイドリアン・ガーヴィッツ、ラファエル・サディークから高く評価されるのも当然だ」と思いながら、ぼくは彼女のステージを満喫しました。

'50年代を代表するドゥーワップ・グループ、ザ・フラミンゴズのヒット曲「I Only Have Eyes For You」に乗せて、アンドラは登場しました。まるでフィルム・ノワール映画に出てきそうなドレスを颯爽と着こなし、レトロな形のマイクを持って「Forever Mine」から歌い始めます。CDを聴いたときから「ワン&オンリーの声だな」とは思っていましたが、ライヴで聴く彼女のヴォーカルの迫力は段違いです。ちょっとしゃがれた、豊かな倍音を感じさせる歌声(エイミー・ワインハウスほど"塩辛くない"感じです)が、広い野外ステージの空いっぱいに響き渡ります。声量に恵まれていることはいうまでもありませんが、マイクへの声の乗せ方もとんでもなく巧みな印象を受けました。

ビリー・ホリデイ、ジャニス・ジョプリン、エタ・ジェイムスなど数多くのシンガーを敬愛しているアンドラですが、ニーナ・シモンへの思い入れは特別なようです。「ニーナのファンの人、いる?」と尋ね、盛大な拍手が返ってきた後に歌い出したのは「Mississippi Goddam」です。そうです、ローリン・ヒルとロバート・グラスパーがプロデュースしたコンピレーション・アルバム『NINA REVISITED... A Tribute To Nina Simone』で、アンドラが熱唱していたナンバーです。この曲は人種差別への抗議をこめた、いわゆるプロテスト・ソングです。生前のニーナはアコースティック・ピアノを弾きながら、この曲を熱唱しました。そしてアンドラは、原曲のリズムやハーモニーを大幅に改めながら(チャールズ・ジョーンズの、フェンダー・ローズ風の音色を出すキーボードがフィーチャーされていました)、しかしニーナと変わらぬ真剣な表情で、歌詞の一言一言をこちらの心に届けるように歌います。プログラム後半では、代表曲「Rise Up」も登場。"待ってました!"とばかりに、オーディエンスの歓声も一段と高まりました。

まだ30歳の若さながら、彼女のパフォーマンスには風格や貫録さえ感じられます。きっと「ブルーノート東京」でも、そこに流れるすべての空気をアンドラのカラーに染めてくれることでしょう。そしてバンドの音作りも極上です(ドラムスのシェイ・グッドウィンはバック・コーラスの達人でもあります)。この初来日公演、伝説になりそうな予感がします。
(原田 2016 9.18)


●ANDRA DAY
2016 9.19 mon., 9.20 tue.  ブルーノート東京
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SET LIST

2016 9.17 SAT.
1. FOREVER MINE
2. GOLD
3. MISSISSIPPI GODDAM
4. HONEY OR FIRE
5. GIN & JUICE
6. NO MAKE UP
7. WHERE WOULD I BE WITHOUT YOU
8. RISE UP
9. CITY BURNS
10. GOODBYE GOODNIGHT
11. I WANT IT ALL

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