原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

Young,Gifted and Soulful。

そう形容したくなる公演が、ブルーノート東京で続いています。20日まではアンドラ・デイが圧巻のステージを繰り広げていましたが、21日と22日は遂にベン・ロンクル・ソウルの登場です。フランス・トゥール出身の彼が「ブルーノート東京」のステージに立つのは4年ぶり。'60〜'70年代の米国ソウル・ミュージックへのリスペクトを全開にした前回のライヴを思い出される方もいるでしょうが、今回はそこにレゲエのテイストが加わります。米国ベイエリア屈指のファンク・バンドであるモノフォニックスの伴奏も絶妙で、90分を超えるプログラムを一気に楽しませてくれました。

オープニングは、'60年代にクリフ・ノブルズ＆ザ・カンパニーが流行らせた「The Horse」（あのベンチャーズもカヴァーしています）。これをモノフォニックス単独で聴かせた後、トランペット奏者のライアン・スコットがベン・ロンクル・ソウルを呼び出します。今回は蝶ネクタイはなし、よりカジュアルな衣装に身を包んでいます。そしてほとんどの曲で椅子に座り、1曲ごとにMCをはさみながら歌いあげます。ダイアナ・ロスやスティーヴィー・ワンダーの歌で知られるモータウン・ナンバー「My World Is Empty Without You」にはレゲエ風のアレンジが加えられ、2017年に没後50年を迎えるオーティス・レディングの遺作「(Sittin' on) The Dock of the Bay」は、やはりオーティスの代表作である「Fa-Fa-Fa-Fa-Fa (Sad Song)」と続けて歌われます。ホーン・セクション、バック・コーラスも一丸となってベンの歌声をバックアップし、場内の熱気は1曲ごとに高まるばかりです。ソウル、ゴスペル、レゲエを融合したような「Hallelujah! (I need you)」はまさしく文字通りの熱唱、後半では11月にリリース予定という新作からいち早く「All the Way」を聴くことができたのも収穫でした。この曲はフランク・シナトラが1957年に創唱したバラードで、MCで曲紹介を聞いたぼくは「よりによって、どうしてこの曲を？」と不思議な気持ちになりました。しかし実際の音に接すると、これがサマになっているのです。原曲のメロディやコード（和音）を巧みに変化させながらのパフォーマンスで、ジャジー・レゲエ・ソウルというべきサウンドを届けてくれました。

超満員のオーディエンスから怒涛のような拍手を受け、握手攻めにあいながらステージを終えたベン。彼の豊かな世界は、広がるばかりです。
(原田 2016 9.22）

Photo by Makoto Ebi