2016 10.27 thu., 10.28 fri., 10.29 sat.
JUNKO ONISHI Plays Tea Times
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
超刺激的なライヴでした。まさかこんな大西順子に出会えるとは。
カムバックを果たした彼女が、約6年ぶりのアルバム『Tea Times』を発表したのは今年の6月のこと。菊地成孔をプロデュースに迎えた同作は(これまでの作品はセルフ・プロデュースでした)、ビッグ・バンド編成あり、日本語ラップあり、とても数えられない拍子の曲が満載という、これまでの"ストレート・アヘッドな4ビート・モダン・ジャズ路線"とは一味異なる仕上がりでした。ぼくは「ここに入っている曲は、果たして生演奏で一晩にいくつも演奏可能なものだろうか」と勝手にあれこれ考えていたものですが、今回、アルバムの主要メンバーが揃い、3日間にわたって「ブルーノート東京」でライヴが行なわれることになりました。こんなに多くの第一人者が集まり、骨の折れる曲を、ひたすら真剣な表情で取り組んでいるステージは、そうそうあるものではありません。この機会を見逃すべからず、ぜひただならぬ緊張感の中に身を任せていただきたいと思います。
ステージ向かって左にホーン・セクション(トランペット3、トロンボーン3、サックス4)、その右にテリオン・ガリー(ドラムス)、少し奥まったところにユニア・テリー(ベース)、いちばん右端に大西順子(ピアノ)が位置します。ピアノは舞台背後の壁に向かっているので、オーディエンスは彼女の背中と譜面台に置かれた膨大なスコアを目にすることになります。オープニングの菊地作曲「GL/JM」では、ニューヨーク在住の作編曲家である狭間美帆が指揮者として登場(この曲のホーン・アレンジも担当しています)。旧・東芝EMI時代からの大西順子のファンには仰天もののサウンドだったことでしょう。しかし冒険的な管楽器の響きの間を縫って響くオクターヴ奏法、低音を重視したゴリゴリのタッチは、まぎれもなく彼女が何十年にわたって築き上げてきたスタイルです。「Chromatic Universe」は、マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスとも交流した伝説的作編曲家、ジョージ・ラッセルの楽曲。自作自演は『Jazz In The Space Age』というアルバムに収められています。ラッセルは同じ曲を何度もレコーディングしたりライヴでプレイしていますが、この曲に限っては、このアルバム1回だけのパフォーマンスだったと思われます。つまりそれほどの難曲なのですが、大西と菊地(ここでは指揮を担当しました)は、これをナマでばっちり決めてしまいます。
菊地はまた、軽妙なトークやラップ(N/K)でも存在感を発揮しました。「Malcolm Vibraphone X」では、OMSB(SIMI LAB)とのツイン・ラップを披露。大西、ユニア、テリオンが激しい音の応酬を繰り広げる中、高まっていく言葉の渦は間違いなくこの夜のクライマックスのひとつでした。ラストは再び狭間美帆が指揮を担当し、自作の大作「The Intersection」へ。様々な色を持った花が咲き乱れるかのような冒頭部、中間部から、菅坡雅彦と菅家隆介のトランペットが呼応しながら終盤にもつれこんでいく展開はスリルそのもの。ぼくは思いっきりカタルシスを感じました。公演は29日まで続きます。
(原田 2016 10.28)
Photo by Yuka Yamaji
2016 10.27 THU.
1st & 2nd | |
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1. | GL/JM |
2. | Tea Time 2 |
3. | Chromatic Universe |
4. | Malcolm Vibraphone X |
5. | Caroline Champtier |
6. | Tea Time 1 |
7. | The Intersection |