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JUN MIYAKE

artist JUN MIYAKE , LISA PAPINEAU

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


リオ五輪の閉会式で流れた「君が代」は本当に鮮烈でした。「日本の国歌って、こんなにかっこよかったのか」と驚いた人も多かったのではないでしょうか。その編曲を手がけた三宅純が現在、自身のプロジェクトで「ブルーノート東京」に登場しています。

高校生の頃にジャズ・トランペット奏者としてシーンに現れ、やがて作曲や編曲の大いなる才能も発揮。映画・CM・舞台、そして先日のオリンピック閉会式と、活動のフィールドは広まるばかりです。ヴィム・ヴェンダース監督の映画「ピナ/踊り続けるいのち」ではアカデミー賞にノミネート、アルバム『ロスト・メモリー・シアター』2部作もヨーロッパの音楽雑誌の年間ベスト・アルバム賞などに輝いています。2005年からパリに拠点をおいていますが、その足取りは、まさにコスモポリタン的です。

メンバーは総勢16人。向かって左からパーカッション、サックス、ギター、ベースが並び、後方に弦楽四重奏が控え、ステージ前方にはヴォーカル陣が立ちます。三宅は向かって右に位置してフェンダー・ローズやアコースティック・ピアノを弾き、フリューゲルホーンで流麗な吹奏を聴かせました。彼らは6日に静岡県の「世界音楽の祭典in浜松」に出演、さらに周到なリハーサルを経てブルーノート東京にやってきました。PAはフィリップ・アヴリルやZAKが担当。照明も幻想的で美しく、ぼくはなんだか音楽の深海に放り込まれたような気持ちになりました。ファースト・セットとセカンド・セットの曲目が、まったくといっていいほど違うのもポイントです。

ブルガリアのソフィアからやってきた"コズミック・ヴォイセズ"(指揮者+3人の女性歌手)の多層的な歌唱に始まり、リサ・パピノー、勝沼恭子、イグナシオ・ゴメスといったシンガーたちが入れかわり立ちかわり、カラフルな歌声を聴かせます。今年24歳のイグナシオは、パリの路上で歌っていたところを三宅に認められた新星。アルゼンチン出身とのことですが、繊細で奥深い歌声にジョアン・ジルベルトやカエターノ・ヴェローゾなど偉大なブラジリアン・アーティストを思い浮かべるリスナーも少なくないはずです。アコースティック&エレクトリック・ギター、そしてウード(アラブの弦楽器)を使い分ける伊丹雅博の雄弁なプレイ、数えきれないほどのパーカッションをあやつり、ひとりでインドとブラジルとアフリカを横断しているかのようなゼー・ルイス・ナシメントが打ち出すリズムにも強く惹かれました。さらに後半では『永遠乃掌』など'80~'90年代の三宅作品に数多く参加している"ジミー"こと村川聡(伝説のユニット"マライア"のシンガーでもあります)がサプライズで登場。世界初披露曲から、2009年に上演された寺山修司・作の演劇『中国の不思議な役人』から「Miraculous Mandarin」(三宅はこの曲を、主演の平幹二朗、およびサックス奏者の宮本大路の思い出に捧げました)までを含む多彩なプログラムは、たまらなくエロチックで、ときに背筋が凍りそうになるほどスリリングでした。

「ジャンルにとらわれない音楽」と口で言うのは簡単ですが、実際のサウンドでそれを表現できるミュージシャンは本当に希少だと思います。三宅純の公演は音楽リスナーだけではなく、航海をやめない意欲的なミュージシャン諸氏にもインスピレーションを与えることでしょう。
(原田 2016 11.10)


Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2016 11.9 WED.
1st
1. Older Charms
2. Still Life
3. Abshana
4. White Rose
5. A Distant Road
6. All Names
7. Outros Escuros
8. Exibida
9. The World I Know
10. Calluna
11. Bre Petrunko
12. Integral Silence
13. The Unspoken
14. Merry Widow
15. Le Voyageur Solitaire
16. Alviverde
 
2nd
1. Zed Fate
2. The Here and After
3. Deciduous
4. Frozen Tide
5. Easturn
6. Red Shadow
7. A Lua Pela Grade
8. Tres
9. Miraculous Mandarin
10. Bre Petrunko
11. Easy To Let Go
12. Flutter
13. Colors
14. Niji wa Tohku
15. Petal
16. est-ce que tu peux me voir?
17. Alviverde

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