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ROBERT GLASPER TRIO

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


コテコテ・ファイアー炸裂だった黒田卓也の公演に続き、昨日からはロバート・グラスパー・トリオのステージが始まりました。「ああ、自分は2016年のサウンドをリアルタイムで体感しているんだなあ」という喜びがこみ上げてきます。今を生きるジャズの面白さをバッチリ伝える公演が続いていることを、ぼくは心から嬉しく思います。しかも彼らの"ジャズ"は、決して難解なものでも技術をひけらかすものでもなく、あくまで腰にズシンと来るのです。ぼくが足を運んだグラスパーの初日も、当然ながら立錐の余地もないほど満員。年齢層は幅広く、男女比もほぼ同じくらいという印象を受けました。いまやグラミー賞の常連となり、23日から日本公開される劇映画「MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間」のサウンドトラックも担当しているグラスパー。"時の人"の音楽には、さらに磨きがかかっています。彼に関心を持ったことをきっかけにジャズへ入門したリスナーは、世界中に何万何千といることでしょう。

昨年はブルーノート東京のほかに、横浜で行なわれた野外フェス「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2015」にも出演し、ハイライトと呼べるパフォーマンスを繰り広げたグラスパー・トリオですが、今回はブルーノート出演のみ。今回はグラスパーのピアノ、ヴィセンテ・アーチャーのベース、デミオン・リードのドラムスという不動の組み合わせに、ジャヒー・サンダンスのターンテーブルが加わります。ぼくは7、8年前、イースト・ヴィレッジで、大御所サックス奏者オリヴァー・レイクのバンドで盤をこすっている彼を見たことがあります。オールド・スタイルのR&Bを取り入れたジャズを表現するレイクと、そこに鋭利な刃物で切り込むようなジャヒの親子共演には文句なしに興奮させられました(つまり、デヴィッド・サンボーンのバンド等に在籍経験のあるドラマー、ジーン・レイクはジャヒの兄にあたります)。そのときはアナログ盤が何十枚も詰まった入れ物を持ちこんでプレイしていましたが、今回はラップトップも導入、自由奔放な音使いでグラスパー・トリオの音世界に、絡みに絡みます。

オープニングは、ことし亡くなったプリンスの「Sign 'O' the Times」。息の長いフレーズと、打楽器的なフレーズを織り交ぜながら、グラスパーははたを織るようにソロを構成していきます。デミオンは左手をめまぐるしく動かしてトップ・シンバルとハイハットを叩き、右手でタムを操って懐の大きなビートを叩きます。ステージ中盤に入った頃、グラスパーは幻想的な無伴奏ソロを始めました。バロックとビバップがどこかで出会ったような、うねるようなプレイが5分ほど続いた後、徐々に「Stella By Starlight」のテーマ・メロディのフラグメント(断片)が飛び出してきます。バド・パウエル、ビル・エヴァンス、チック・コリアなど数々のピアノ・ジャイアントに愛奏されてきた、この歴史的なスタンダード・ナンバーをグラスパーはハーモニーとメロディの双方で刷新し、ヴィセンテは斬新なベース・ラインをつけ、デミオンはたくさんの3連符を使った8ビートで煽りたてます。

今回の来日に際してリストアップされたレパートリーは20曲ほど。その中のどれがプレイされるかは、その日その公演に足を運んだひとだけが体験することのできる特権です。ステージは22日までオフ日なく続きます。
(原田 2016 12.19)

Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2016 12.18 SUN.
1st
1. SIGN OF THE TIMES
2. PACKT LIKE SARDINES IN A CRUSHED TIN BOX
3. ENOCH'S MEDITATION
4. STELLA BY STARLIGHT
5. IN CASE YOU FORGOT
 
2nd
1. SIGN OF THE TIMES
2. RISE AND SHINE
3. ONE FOR 'GREW
4. ENOCH'S MEDITATION
5. IN CASE YOU FORGOT
6. ELECTRIC RELAXATION

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