2017 1.24 tue., 1.25 wed.
BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO with special guest JON FADDIS - celebrating 100 birth anniversary of DIZZY GILLESPIE -
artist BLUE NOTE TOKYO ALL JAZZ ORCHESTRA , JON FADDIS
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
ビッグ・バンド・ファン、トランペット・ファン、ラテン・ファン、ジャズ・ファンすべてにお勧めしたいセッションです。
キラ星のようなメンバーが集まった"ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ"の1月公演が、今年も盛大に繰り広げられています。今回のスペシャル・ゲストはトランペット奏者のジョン・ファディス。今年で生誕100周年を迎えるトランペット奏者、ディジー・ガレスピーへのセレブレイションです。
チャーリー・パーカーと共にモダン・ジャズの原型"ビ・バップ"を創造したとされるガレスピーはまた、大変なビッグ・バンド人間でした。テディ・ヒル、レス・ハイト、デューク・エリントン、キャブ・キャロウェイ、ビリー・エクスタイン等の楽団で腕を磨き、1945年には最初の"ディジー・ガレスピー・オーケストラ"を結成。解散と再結成を繰り返しながら(解散している間はコンボ=小編成のグループを率いていました)、93年に亡くなるまで第一線で活動を続けました。後進の育成や発掘にも定評があり、ジョン・ファディスは'70年代から繰り返しガレスピーと共演。'80年代後半に新たに結成されたガレスピー・ビッグ・バンド(別名ユナイテッド・ネイションズ・オーケストラ)ではリード・トランペッターを務めました。ほかにもサド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ(ヴァンガード・ジャズ・オーケストラの母体)、ジャコ・パストリアス・ワード・オブ・マウス・ビッグ・バンド等、錚々たる楽団に在籍経験があり、そのハイノート・プレイは今なお強力です。また彼は、著名なヒップホップ・プロデューサー、マッドリブの叔父でもあります。
前半はオーケストラ単独によるパフォーマンスが行なわれました。テーマ・ソングである「Trains」で場内を暖めた後(新加入のパーカッション奏者、岡部洋一のプレイが躍動感を倍加させました)、エリックの書き下ろしによる「Dairo」がプレイされます。これは昨年亡くなったオーケストラの初代バリトン・サックス奏者、宮本大路へのトリビュートです。「最初に書いたときは暗い雰囲気のバラードになってしまったが、ひょうきんな人柄だった彼にはふさわしくないと思い、明るい感じに書き直した」というようなことがMCで語られました。武村直哉のバリトン・サックスや佐野聡のハーモニカをフィーチャーした軽やかなサンバ・タッチで盛り上げ、後半は4本のフルートを含むアンサンブルで、しっとりと。聴いていて心が温まってくるような楽曲です。
ファディスがコンダクターを務めるコーナーは、ラテン・ジャズの古典「Manteca」から始まりました。ガレスピーがこの曲を、キューバ出身の打楽器奏者チャノ・ポソと合作したのが1947年。今からちょうど70年前のことです。本田雅人のフルート、佐野聡のハーモニカ、岡部洋一のパーカッション等にスポットが当たり、さっそくファディスもハイノートを轟かせます。ファディスはまた、「'Round Midnight」(やはり今年で生誕100年を迎えるセロニアス・モンク作のバラード。ガレスピーやマイルス・デイヴィスの愛奏曲でもあります)では、ミュートを用いてじっくりとメロディを奏でました。「A Night In Tunisia」はトロンボーン・セクション全員(村田陽一、中川英二郎、佐野聡、山城純子)をフィーチャー。ファディスは圧倒的なハイノートを聴かせるだけでなく、後半のカデンツァではトランペットの二井田ひとみと掛け合いを繰り広げながら、場内を興奮のるつぼへと誘いました。演奏後、ファディスは彼女を「本当に素晴らしい才能の持ち主。ナンバー・ワンだ」と称賛しましたが、まったくその通り。芳醇な音色、リズムの良さ、一音たりともおろそかにしない丁寧な吹奏。この夜、ブルーノートを埋め尽くしたファンは、誰もが二井田ひとみにMVP賞を送りたくなったことでしょう。
2時間にも及んだステージのオーラスは、ガレスピーが'70年代に書いたラテン・ジャズ「Tanga」。「一緒に吹こうぜ」というファディスの誘いに応じて、エリックとのトランペット・チェイスが繰り広げられました。これまた、熱い! ハイノートの連発を射ち込むファディス、ハイノートを混ぜながらもニュアンス豊かにフレーズを紡ぐエリック。"トランペット・ブラザーズ"の語らいは大成功に終わりました。熱狂の公演は本日も行なわれます。
(原田 2017 1.25)
Photo by Yuka Yamaji
2017 1.24 TUE.
1st | |
---|---|
1. | TRAINS |
2. | OOPS ! |
3. | WOODY'N YOU |
4. | EMANON |
5. | A NIGHT IN TUNISIA |
6. | I REMEMBER CLIFFORD |
7. | GROOVIN' HIGH |
8. | DOMINGO |
EC. | TANGA |
2nd | |
1. | TRAINS |
2. | DAIRO |
3. | OOPS ! |
4. | MANTECA |
5. | JORDU |
6. | ROUND MIDNIGHT |
7. | A NIGHT IN TUNISIA |
8. | THINGS TO COME |
9. | DOMINGO |
EC. | TANGA |