LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


KANDACE SPRINGS

artist KANDACE SPRINGS

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


まだ肌寒さの残る毎日ですが、昨日からハートウォーミングなステージが始まっています。プリンスが"雪をも溶かすような歌声"と称賛したキャンディス・スプリングスの公演です。ブルーノート東京への登場は昨年9月以来、半年ぶり2度目。ニュー・スターの開花と飛翔を、定点観測的に見届けることができるのは嬉しいものです。

メンバーはキャンディスに、前回の公演にも同行していたドラムスのディロン・トレイシー、"For Trees & Birds"というジャズ・バンドでも活動するベースのクリス・ガスケルの3人。クリスは今回が初来日とのことです。キャンディスはアコースティック・ピアノとフェンダー・ローズを使い分け、曲によってはソロによる弾き語りも披露。オスカー・ピーターソン作「Chicago Blues」ではピアノに専念し、切れのあるアドリブをたっぷり聴かせてくれました。その他、自作に混じってデューク・エリントンの「Solitude」、エリントンの右腕ビリー・ストレイホーンの「Lush Life」、ビリー・ホリデイが創唱しカサンドラ・ウィルソンもとりあげた「Strange Fruit」といったジャズ史上の古典もしっとりと歌い綴りました。いずれも彼女が生まれる50年も前に書かれたナンバーですが、名曲の威力は時代を超えています。数か月後にはニュー・レコーディングに取りかかるとのことですが、ひょっとしたら目下の最新作『Soul Eyes』以上に、伝統的なジャズ・アルバムになるのではないか、というのがぼくの予想です。

17歳の時に書いたというファンキーな「Catch Me When I'm Falling」、リフレインが印象的な「Human」などオリジナル曲も充実そのもの、ロバータ・フラックの代表曲「First Time Ever I Saw Your Face」における抑えに抑えたパフォーマンスも強く印象に残りました。豊かにふくらんだ髪の毛をゆらしながら弾き語る姿は、どこか1970年代のロバータに通じるものがあります。オーラスは、プリンスが彼女に注目するきっかけとなったいわくつきの曲「Stay with Me」(キャンディスはこのカヴァーを動画サイトに載せ、プリンスはそれを見て大感激したのでした)。もちろんサム・スミスの大定番ではあるのですが、スキャットを交えての弾き語りはキャンディスの個性がきらめく独自のもの。どこをとっても"キャンディス以外の誰にも成し得ない「Stay with Me」"になっていました。

入魂の自作から、1930年代に作られたヴィンテージ級のナンバーまで。時代を飛び越えた佳曲の数々が集まる、まさしくソングブックというべきライヴでした。公演は15日まで続きます。
(原田 2017 3.14)

Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2017 3.13 MON.
1st
1. NOVACAINE HEART
2. TALK TO ME
3. CHICAGO BLUES
4. SOUL EYES
5. PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND
6. SOLITUDE
7. THOUGHT IT WOULD BE EASIER
8. LUSH LIFE
9. HOW INSENSITIVE
10. CATCH ME WHEN I'M FALLING
11. THE WORLD IS A GHETTO
12. STRANGE FRUIT
13. PLACE TO HIDE
14. HUMAN
15. FIRST TIME EVER I SAW YOUR FACE
EC. STAY WITH ME
 
2nd
1. NOVACAINE HEART
2. NEITHER OLD NOR YOUNG
3. CHICAGO BLUES
4. SOUL EYES
5. PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND
6. DAYDREAM
7. LOVE GOT IN THE WAY
8. LUSH LIFE
9. HOW INSENSITIVE
10. MEET ME IN THE SKY
11. TOO GOOD TO LAST
12. THE WORLD IS A GHETTO
13. PLACE TO HIDE
14. NEARNESS OF YOU
15. HUMAN
16. FIRST TIME EVER I SAW YOUR FACE
EC. AT LAST

INDEX