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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


カート・ローゼンウィンケル・カイピ・バンド(最終日はソールド・アウトになりました)の興奮と感動がさめやらぬなか、昨日からはスナーキー・パピーのステージです。ブルーノート東京に初登場したのは2013年のことですが、それから4年、改めて説明の必要がないほどの超人気ユニットへと躍進しました。「よく、こんなにオーディエンスを収容できたなあ」といいたくなるほどの超満員。観客もミュージシャンも、みんな笑顔です。

場内にみなぎる、いまにもはちきれそうな高揚感を受けて、スナーキー・パピーはしょっぱなから熱演につぐ熱演を繰り広げます。しかも今回はオルガンとキーボードに、あの名手ボビー・スパークスが参加しているのです。2012年にはジョージ・デュークとスタンリー・クラークの"クラーク=デューク・プロジェクト"(ちなみに故デュークは、今度発売されるロナルド・ブルーナーJr.のソロ・アルバムでも演奏しています)、2013年にはロイ・ハーグローヴの"RHファクター"でブルーノート東京の舞台を踏んでいるスパークスですが、この日のプレイもその名の通り「スパークしている」としかいいようのないものでした。すさまじく緩急の変化に富んだオルガン・プレイ、聴いていて思わず腰が動いてしまうクラヴィネット・・・やはり"RHファクター"で来日経験のあるドラマーのジェイソン・JT・トーマスの加入もあって、今回のスナーキー・パピーはより一層ファンク度、ソウル度アップです。ぼくは20世紀の終わりに「元祖コテコテ・デラックス」という本を書いたことがありますが、当時スナーキー・パピーがいたら、真っ先にとりあげていただろう、と確信しました。

リーダーのマイケル・リーグは決して目立たず4弦ベースでじっくりとアンサンブルの底辺を支え、小川慶太はさまざまなパーカッションを自在に操りながらリズムのコクを高めます。新作『Culcha Vulcha』からの、ブラジル音楽を取り入れた「Semente」も、ぼくはとても興味深くききました。というのはカート・ローゼンウィンケル・カイピ・バンドもブラジル音楽に強く影響を受けているからです。でもカートがミナス・インスパイア系だとすれば、スナーキーの同曲にはバイヨン風味もあって、個人的にはノルデスチ・インスパイア系と呼びたい気分でした。トランペットとフェンダー・ローズを兼任するジャスティン・スタントン、クリス・ブロックのテナー・サックスとフルートを瞬時に使い分ける早業も見事。マイク・マー(Maher)はトランペットもフリューゲルホーンも絶品、とくに後者のトーンはブラス楽器の輝かしさ+トランペットとは異なる独特の太さ・柔らかさを兼ね備えたもので、'90年代頃までのトム・ハレルに十分匹敵する、すばらしく秀逸なフリューゲルホーン・プレイであると感じ入ったのは自分だけではないと思います。

ちょっとビートルズの「You Won't See Me」を思わせるメロディも聴こえる「Quarter Master」で幕を閉じた初日ファースト・セット。空前絶後の32枚組CD『World Tour 2015 Collector's Edition Box Set』を出しているほどの"根っからのライヴ・バンド"、スナーキー・パピーの、今このときに放つ音をぜひ、目の前で体感してください。公演は18日まで!
(原田 2017 4.17)


Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2017 4.16 SUN.
1st
1.
2. GROWN FOLKS
3. KITE
4. TAROVA
5. SEMENTE
6. WAM
EC. QUARTER MASTER
 
2nd
1. FLOOD
2. BINKY
3. GROWN FOLKS
4. GEMINI
5. LINGUS
EC. SHOFUKAN

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