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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


最新作『The Good Life』をリリースしたばかり。ドイツの俊英ティル・ブレナーが、昨日からブルーノート東京で熱演を繰り広げています。これまでのティルにはどちらかというと淡々とステージを進めていた印象があるのですが、今回はMCパートも増え、ジョークを交えながら観客を沸かせていました。「ティルって、こんなに陽気なキャラクターだったのか」と思いながら、ぼくはライヴを楽しみました。

バンドスタンドにはまず、サポート・メンバーが登場し、第二次大戦後まもなくのハリウッドの恋愛映画に出てくるようなロマンティックなメロディをスロー・テンポで演奏します。やがてそれは様々な調子に替わり、やがてドラムスのデヴィッド・ヘインズがティルの名前を呼びあげます。1曲目は2012年リリースのセルフ・タイトル・アルバムから「Condor」(デイヴ・グルーシンのカヴァー)。いきなりエフェクターを駆使したティルのトランペットが炸裂し、ブルーノ・ミュラーのロック調のエレクトリック・ギターがワイルドに迫ります。つづいては一転、ソフトで甘い「The Good Life」を最新作から。ブリジット・バルドーと交際したこともあるギタリスト/歌手のサッシャ・ディステル(有能なジャズ・ミュージシャンでもありました)が1960年代に書いたシャンソンです。スロー・バラードで披露されることの多い楽曲ですが、ティルはノスタルジックな2ビートで快調に表現しました。

「ニュー・アルバムは本当に最高の出来になった。だけどレコーディングの間、なにかスパイスが足りないと思っていたんだよね。そのスパイス役として生まれたのがこの曲だ」という前置きから始まったのは、「Her Smile」。ティルの英語ヴォーカルと、ブルーノのアコースティック・ギターが優しく絡みます。続く「Return To The Fold」は、1970年代前半に人気を集めたジャズ系レーベル"CTI"(フレディ・ハバード、ジョージ・ベンソン、ドン・セベスキーらが所属)へのオマージュ。ディレイをかけたマーク・ワイアンドのテナー・サックス、ヤスパー・ソファーズのフェンダー・ローズも大きくフィーチャーされました。

ミシェル・ルグランのシャンソンにジョニー・マーサーが英語詞をつけた「Once Upon A Summertime」では、他のミュージシャンのライヴではあまり体験できないパフォーマンスが行なわれました。歌唱するのではなく、まず詞を朗読、その後にインストゥルメンタルでメロディを奏でるという趣向です。マイルス・デイヴィスやチェット・ベイカーなど伝説的トランペット奏者も吹き込みを残していますが、ティルはフリューゲルホーンで滑らかに演奏。最後の最後で、ひとりスポットライトを浴びながら、鮮やかな指使いやハーフ・ヴァルヴ奏法も用いつつ聴かせたカデンツァ(ひとりで演奏する曲の終結部分)は、個人的にはこの夜最高のクライマックスでした。

オーラスは母国ドイツの巨星、J.S.バッハの「G線上のアリア」。ぼくは「2月に来日した(やはりトランペットの貴公子と呼ばれる)クリス・ボッティもクラシックの曲を演奏していたなあ」と思いながら、メロディの美しさ、まろやかな吹奏に浸りました。公演は25日まで続きます。
(原田 2017 4.24)


Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2017 4.23 SUN.
1st
1. INTRO
2. CONDOR
3. THE GOOD LIFEN
4. 42ND & 6TH
5. ONCE UPON A SUMMERTIME
6. HER SMILEL
7. DISTANT EPISODE
8. AQUELAS
9. HAPPY
EC. IN A SENTIMENTAL MOOD
 
2nd
1. INTRO
2. CONDOR
3. THE GOOD LIFE
4. HER SMILE
5. RETURN THE FOLD
6. ONCE UPON A SUMMERTIME
7. AQUELAS
8. HAPPY
EC. AIR ON THE G STRING

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