2017 5.29 mon., 5.30 tue., 5.31 wed.
DIANNE REEVES
artist DIANNE REEVES
輝きと誘いが横溢。これぞ、今のジャズ・ヴォーカルというパフォーマンス!
"羽の生えた、歌唱"。もし、そういう言い方があるとすれば、ダイアン・リーヴスのパフォーマンスはまさにそれに合致するのではないか。
その素材となる楽曲は、パット・メセニーの「ミヌアーノ(シックス・エイト)」、ウェイン・ショーターの「インファント・アイズ」、マイルス・デイヴィスの「オール・ブルース」、メンバーたちとリーヴスが共作した「コールド」、ボブ・マーリーの「ウェイティング・イン・ヴェイン」、など......。
リーヴスはしっかりと曲の出自や持ち味を熟考したうえで、それらをまさに私の歌唱として送り出す。その際、彼女は曲の旋律にある機微を噛み砕き、さらに創意とともに揺れや奥行きを加えもする。すると、取り上げた曲群はもう一つの輝きや誘いを身にまとい、会場内を自由に舞う。
また、彼女はジャズという様式の自由さを伝えようとするように、奔放きわまりないスキャットも思うまま披露する。すると、取り上げた曲群はさらに翼を得て、聞き手の心に飛び込んでくる。その様はまさに今、もっとも秀でたスキャットの使い手であるという感慨を接する者に与えるだろう。そういえば、彼女はMC的な文言やプレイヤー紹介も自在に曲中で、歌いながらこなしてしまう。それもまた、彼女のショウの醍醐味と言える。
そうした<現代ジャズ・ヴォーカルの女王>という定評が合う、リーヴスの歌唱が見目麗しく届けられるのは、長年活動を共にしている辣腕プレイヤーたちが噛み合う広角型の伴奏があってこそ。ジャズの流儀を根に起きつつ、R&B、ポップ・ロック、ブラジル、レゲエといった様々な要素が噛み合う演奏は現在のリーヴスの作法に不可欠なものだ。そういえば、アンコールの「ユー・トウト・マイ・ハート・トゥ・シング」(マッコイ・タイナーの曲)はピアニストのピーター・マーティンとのデュオで瑞々しく披露されたが、そのとき他の奏者たちは楽屋に戻らずに場内後ろに立ってニコニコとパフォーマンスを見守っていた。うーん、これぞ心の通いあうバンドのあり方ではないか。
近く、リーヴスは『ライト・アップ・ザ・ナイト』と名付けたフランスのフェスで録音されたライヴ盤を出す。それは同じ顔ぶれのバンドにハーモニカ奏者のグレゴア・マレを加えた陣容によるもので、この晩の実演とももちろんつながる。そんな新作のリリースは、彼女が現在のライヴ・パフォーマンスにいかに自信を持っているかを伝えてくれる。
text : 佐藤英輔
出版社勤務を経て、フリーランスの物書きとなる。グルーヴと飛躍する感覚と酔狂さがある音楽が好み。ライヴを中心に扱ったブログはこちらから
Photo by Takuo Sato
2017 5.29 MON.
1st | |
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1. | BROADMOOR |
2. | THE TWELFTH OF NEVER |
3. | MINUANO |
4. | INFANT EYES |
5. | ALL BLUES |
6. | COLD |
7. | WAITING IN VAIN |
EC. | YOU TAUGHT MY HEART TO SING |
2nd | |
1. | BACHAIO |
2. | DREAMS |
3. | TANGO |
4. | OUR LOVE IS HERE TO STAY |
5. | THE MAN I LOVE |
6. | MISTA |