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ELIANE ELIAS TRIO

artist ELIANE ELIAS

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


前作『メイド・イン・ブラジル』がグラミー賞の最優秀ラテン・ジャズ・アルバム賞に輝き、発売されたばかりのニュー・アルバム『ダンス・オブ・タイム』もさっそく米仏独など6か国のジャズ・チャートで首位を獲得。ますます人気の高まるイリアーヌが、サンバ100年を記念した入魂のパフォーマンスをブルーノート東京で繰り広げています。マーク・ジョンソン(ベース)とのおしどりコンビには一層の磨きがかかり、イリアーヌはビル・エヴァンスへの敬愛を感じさせるピアノ・プレイはもちろん、ポルトガルや英語によるヴォーカルもたっぷり聴かせてくれました。

オープニングはアントニオ・カルロス・ジョビン作「O Morro não tem Vez」。哀感のこもったメロディで知られるボサ・ノヴァの名曲ですが、旋律の魅力と同時にアドリブの醍醐味も味わわせてくれるのがイリアーヌの世界です。全鍵盤をフルに使うかのごときスケールの大きなピアノ・プレイにリズム・セクションが絡み、わずか3人とは思えないような音の広がりを生み出します。ジョンソンがアンサンブル部分で弓を用いて、サウンドに深みを加えていたのも印象的でした。新加入のドラマー、ティアゴ・ミシェリンはピアノの名手ナンド・ミシェリン(ウルグアイ生まれ)の息子。幼い頃ブラジルに住んだことがあり、そこで伝統的なサンバ・リズムのレッスンを受けたことがあるそうです。現在はN.Y.ブルックリンに拠点を置いていますが、"2010年代のジャズ・サンバ"というべきシャープなプレイは、確実にイリアーヌの音作りに刺激を与えていると思います。

カルメン・ミランダ他も歌った「Brazil」、ホベルト・メネスカウ(ロベルト・メネスカル)が書いた「Você」など、メロディもリズムもコードも美しい曲が次々とプレイされていきます。ジョアン・ドナートの古典「Sambou, Sambou」では、"チャチャチャよりもロックンロールよりもサンバで踊りましょう"と軽妙に歌い、客席から盛大な手拍子を引き出します。「ガチョウのサンバ」という邦題で知られる「O Pato」もステージ後半でとりあげられましたが、この曲に入る前のイリアーヌのMCがまた、楽しいものでした。

"歌詞の中でガチョウが鳴くの。ポルトガル語では「クェン、クェン、クェン」というんだけど、日本語ではどう呼ぶのかしら?"
客席から"ガー、ガー、ガー"という声が飛びます。イリアーヌはさっそく歌の中に「クェン」だけではなく「ガー」も織り交ぜ、さらにファンを沸かせました。ほかにも遠距離恋愛をテーマにした自作「By Hand (Em Mãos)」、ジョビンの定番を組曲仕立てにアレンジした「Desafinado」等、盛りだくさんのプログラムで約80分、徹底的に楽しませてくれました。公演は22日まで続きます。新鮮そのものの名曲の数々を、ぜひ至近距離でご満喫ください!
(原田 2017 6.21)


Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2017 6.20 TUE.
1st
1. O MORRO NÃO TEM VEZ
2. BRASIL (AQUARELA DO BRASIL)
3. VOCÉ
4. SAMBOU SAMBOU
5. COISA FEITA
6. LITTLE PARADISE
7. BY HAND
8. O PATO
9. DESAFINADO
EC. CHICLETE COM BANANA
 
2nd
1. O MORRO NÃO TEM VEZ
2. BRASIL (AQUARELA DO BRASIL)
3. VOCÉ
4. SAMBOU SAMBOU
5. COISA FEITA
6. LITTLE PARADISE
7. BY HAND
8. O PATO
9. DESAFINADO
EC1. THE GIRL FROM IPANEMA
EC2. SO DANÇO SAMBA

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