2017 6.23 fri., 6.24 sat.
AI KUWABARA with STEVE GADD & WILL LEE
Somehow, Someday, Somewhere Tour
artist STEVE GADD , WILL LEE , 桑原あい
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
子供のころから聴き馴染んできた憧れのミュージシャンと一体となって、ひとつの音楽をつくりあげる喜び。世界最高峰のリズム・セクションのひとつが提供するハッピーなグルーヴに乗って、ピアノを存分に弾きまくる喜び。そして、立ち見まで出た超満員状態の観客がおくる、喜びにあふれた拍手と声援。
たくさんの喜びが伝わる、胸のすくようなライヴでした。気鋭ピアニスト、桑原あいの今回の「ブルーノート東京」公演はなんと、ウィル・リー、スティーヴ・ガッドとの登場です。
この3人がニューヨーク録音によるアルバム『Somehow, Someday,Somewhere』をリリースしたのは、今年2月のこと。「ウィルもスティーヴも超多忙だし、ライヴをするのは難しいかも」と思っていたそうですが、桑原の才能を高く評価するふたりがスケジュールを調整したことで、今回の来日ツアーが実現しました。ぼくは先日、仮BAND(某メタル・アイドル・グループのサポートで、世界中を飛び回っています)のアルバム『仮音源 -Demo-』を聴き、そこにゲスト参加した彼女の縦横無尽なプレイに唸らされたばかりですが、この日も冒頭の「Somehow It's Beena Rough Day」から飛ばしていきます。百戦錬磨のウィルとスティーヴが、「若手につきあう」という感じではなく、「一緒によりよい音楽を創造していく」という感じでベースを弾き、ドラムスを叩き、時に主役のピアノを煽ってゆくあたり、抜群のスリルです。
故ミシェル・ペトルチアーニの「Home」(スティーヴは彼の最後のトリオのドラマーでした)、ミュージカル「ウェスト・サイド物語」からの「Somewhere」(ウィルがエレクトリック・ベースから、まるでチェロのようなロング・トーンを響かせました)などカヴァー曲を選ぶセンスにも心憎いものがありましたが、桑原あいの書いたオリジナル曲がまた、レンジが広くて実に面白いのです。
桑原とウィルのワードレス・ヴォーカルが掛け合いを演じる「All life will end someday, only the sea will remain」の抒情味、真っ赤な照明を受けてニューヨークの"うるささ"を音で表現する「Extremely Loud But Incredibly Far」、モントルー・ジャズ祭でクインシー・ジョーンズから励ましの言葉を受けたことが基となって生まれた「The Back」など、どれもキャラクターが立っています。数年前、一時スランプに陥ったこともあるとMCで語っていましたが、もうそれが来ることは二度とないはずです。
オーラスはボブ・ディラン作「Watching the River Flow」。スティーヴが'80年代に率いていた"ザ・ガッド・ギャング"ではインストゥルメンタルで演奏されていましたが、今回はウィルのヴォーカルをフィーチャーした、よりロック色の強いアプローチに。桑原、ウィル、スティーヴの白熱したプレイは、本日も数えきれないほどの快感を届けてくれることでしょう。
(原田 2017 6.24)
Photo by Tsuneo Koga
2017 6.23 FRI.
1st & 2nd | |
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1. | Somehow It's Been a Rough Day |
2. | Home |
3. | Never Neverland |
4. | Somewhere |
5. | All life will end someday, only the sea will remain |
6. | Extremely Loud But Incredibly Far |
7. | The Back |
EC. | Watching the River Flow |