2017 7.23 sun., 7.24 mon., 7.25 tue.
Bluey from INCOGNITO presents "CITRUS SUN & THAMES RIVER SOUL"
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
「インコグニートだけじゃ足りないんだ。いずれは12のバンドを持ちたいと思っているよ。そうしたら毎月、日本にやってこれるじゃないか」。
ブルーイはそう言って観客を喜ばせます。彼が率いる別ユニット"シトラス・サン"が昨日から「ブルーノート東京」に登場しています。しかもメンバーのフランシス・ヒルトン(ベース)、フランチェスコ・メンドリア(ドラムス)、フランシスコ・サレス(ギター)は、"テムズ・リヴァー・ソウル"というユニットでも活躍中です。今回の公演は、シトラス・サンとテムズ・リヴァー・ソウルの両方が楽しめる、大サービスの内容なのです。
双方のプロジェクトに共通しているのは、聴きやすさ、楽しさ、躍動感はもちろん、'70~'80年代のジャズ・ファンク/フュージョンに対する強烈な愛情です。「今回はどんなカヴァー曲を聴かせてくれるのだろう」と思いながら会場に向かったのですが、ハービー・ハンコックの「I Thought It Was You」を取り上げたのには驚かされました。この曲はハービー本人がヴォコーダーを使って歌ったディスコ・ナンバーですが、その印象が強すぎるためかカヴァー・ヴァージョンの数は決して多くありません。シトラス・サンは、原曲のタテノリのリズムを流れるようなラテン調に変え、ヴォコーダーの部分をジョイ・ローズとブルーイのヴォーカル・ユニゾンで聴かせます。"この曲って、こんなにメロウにも解釈できるんだ"と、ぼくは快い気持ちになりました。もうひとつ意外なカヴァーだったのは、日野皓正の「Send Me Your Feelings」です。1979年、日野がハリー・ウィテカー(ロバータ・フラック・バンド)、レオン・ペンダーヴィス(ブルース・ブラザーズ・バンド)、ハワード・キング(ゲイリー・バーツNTU TROOP)などブラック・ミュージックの才人達と組んだ歴史的大傑作『シティ・コネクション』からのナンバー。この作品は日本でベスト・セラーを記録するだけではなく、海外でもリリースされました。ブルーイもこのアルバムの大ファンだとMCで語り、ケヴィン・ロビンソンのトランペットをフィーチャーしながら軽やかにカヴァーしました。
「Soul Eyes」は'50年代に、モダン・ジャズ系のピアノ奏者マル・ウォルドロンが若きジョン・コルトレーンのために書いたバラードです。シトラス・サンのライヴではいつも、ベテラン・ギタリストのジム・マレンをフィーチャーする曲として紹介されています。が、マレンは療養中であり(来年にはツアーに復帰できるかも、とのことです)、今回はフランシスコ・サレスが大活躍しました。ブルーイはこの曲をモリシ―=マレン(サックス奏者の故ディック・モリシ―と、マレンが組んでいたフュージョン・ユニット)の演奏('79年のアルバム『Cape Wrath』のことでしょうか)で知ったそうです。
その他、先日亡くなったドラマー、ジョン・ブラックウェル(「ブルーノート東京」にはニック・ウェストのバンドで登場)へのトリビュートあり、マイルス・デイヴィスに捧げた書き下ろしありと、ミュージシャン、プロデューサー、そして超の字のつく音楽マニアとしてのブルーイが満喫できるステージでした。年末にはインコグニートの来日も決定しましたが、まずは25日まで続く当公演で、爽快なひとときを味わっていただければと思います。
(原田 2017 7.24)
Photo by Makoto Ebi
●Bluey from INCOGNITO presents
"CITRUS SUN & THAMES RIVER SOUL"
2017 7.26 wed. SAPPORO CITY JAZZ 2017
2017 7.23 SUN.
1st & 2nd | |
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1. | MAIS UMA VEZ |
2. | PEOPLE OF TOMORROW |
3. | I THOUGHT IT WAS YOU |
4. | SEND ME YOUR FEELINGS |
5. | SOUL EYES |
6. | DRUM / PERCUSSION SOLO |
7. | L’ARC EN CIEL DE MILES |
8. | COOKING WITH WALTER |
9. | PICK UP THE PIECES |
10. | RIDE LIKE THE WIND |
11. | LOVE X LOVE |
12. | FUNKIN’ FOR JAMAICA |