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THE HOT SARDINES

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


去る6月、毎週月曜日に「ブルーノート・ニューヨーク」に登場し、ファンを沸かせた人気グループがザ・ホット・サーディンズです。彼らのおよそ11か月ぶりの来日公演が、昨日からスタートしました(通算二度目)。ラグタイム、ディキシー、スウィングへの敬意にあふれた温故知新の音楽性、まるで1920年代のサイレント映画の中から飛び出してきたような粋なファッション・センスには、さらに磨きがかかっています。

オープニングは約100年前の1918年に著作権登録された「After You've Gone」。クラリネット奏者ベニー・グッドマンが1935年にアップ・テンポで解釈してから、その手の解釈が目立つようになりましたが、ザ・ホット・サーディンズは根っからのマニア気質なのでしょう、いまではほとんど忘れられているヴァース(前歌)部分をスロー・テンポで表現し、やがて快調なテンポによる主題(コーラス)へと移ります。ミズ・エリザベス・ブージェロルの明瞭なヴォーカル、ロバート・パーキンスのリゾネーター・ギター(ジャズ系のバンドでは、ほとんど使われることのない楽器です)、ACリンカーンのタップダンスが絡み合い、オーディエンスをスウィングの快楽へと引き込みます。続いては、これも最近では殆どとりあげられなくなった「Ghost of a Chance」(1932年にヴィクター・ヤングが作曲)。タイトルは"機会を狙って出る幽霊"ではなく、"まったく可能性がない"という意味ですが、ザ・ホット・サーディンズは、いまにもお化けが出てきそうなおどろおどろしい前奏をつけて、エリザベスの歌へとつなぎます。

前回の来日でもファンを喜ばせたエヴァン・シュガー・クレインのスーザフォン演奏はこの日、「Goin' Crazy」で聴くことができました(ほかはベースを演奏)。これまた、すごくマニアックな曲で、エリザベスが「1926年にメイミー・スミスが吹き込んだブルースです」と紹介しなければ、ぼくは誰の何の曲かわかりませんでした。メイミーは史上最初にブルースをレコード化した女性シンガーのひとりに数えられており、"ジャズ・テナー・サックスの開祖"コールマン・ホーキンスも少年時代、彼女のバンドで働いていました。ドラムスのデヴィッド・バーガーは、ロール奏法(左右のスティックを交互に早く動かす)でスネア・ドラムを叩き、リズムを生み出します。1930年代までのジャズ・ドラムはシンバルやハイハットではなく、ロールによる脈動(といえばいいでしょうか)こそが、リズムの肝でした。それを踏まえて、デヴィッドはこういうアプローチを行なったのでしょう。

その他、リーダーのエヴァン・パラッツォが聴かせるストライド・ピアノ、エリザベスが歌いながら奏でるウォッシュボード(洗濯板)、リンカーンのつま先タップ・ダンスなど、見ても聴いても楽しい場面が満載。ノスタルジックなのに新鮮なパフォーマンスは、ジャズ好きだけではなく、アメリカン・ルーツ・ミュージックの支持者にも訴えるはずです。公演は5日まで続きます。
(原田 2017 8.4)


Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2017 8.3 THU.
1st
1. I LOVE PARIS
2. KEEPIN’ OUT OF MISCHIEF NOW
3. ZAZOU
4. BABY WON’T YOU PLEASE COME HOME
5. I WANNA BE LIKE YOU
6. WHITE CLIFFS OF DOVER
7. SOME OF THESE DAYS
8. SWEET PEA
9. SUMMERTIME
10. DINAH
EC. BEI MIR BIST DU SCHOEN
 
2nd
1. AFTER YOU’VE GONE
2. I DON’T STAND A GHOST OF A CHANCE (WITH YOU)
3. CRAZY RHYTHM
4. LA FILLE AUX CHEVEUX ROUX (WEED SMOKER’S DREAM)
5. JELLY ROLL
6. COMES LOVE
7. GOIN’ CRAZY WITH THE BLUES
8. WAKE UP IN PARIS
9. IT’S A SIN TO TELL A LIE
10. LULU’S BACK IN TOWN
11. SWEET PEA
12. BILL BAILEY
EC. BEI MIR BIST DU SCHOEN

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