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JOHN BEASLEY'S MONK'estra / Thelonious Monk Centennial Celebration

artist JOHN BEASLEY , TERREON GULLY

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


数々のテレビや映画の音楽を担当し、マイルス・デイヴィスやスティーリー・ダンやイヴァン・リンスやセルジオ・メンデスやクイーン・ラティファなど名だたるミュージシャンのサポートも経験。グラミー賞やエミー賞へのノミネート歴もあるキーボード奏者のジョン・ビーズリーが、ついにリーダーとして来日しました。

題して"モンケストラ"。ジャズ史上に輝くピアニスト/作曲家のセロニアス・モンクの楽曲に光を当てるというプロジェクトです。すでに2枚のアルバムが発表されて好評を博していますが、モンク生誕100年にあたる今年、彼が書き遺したオリジナルの数々を、気鋭ミュージシャンたちの生演奏で味わえるのは実に嬉しいものです。メンバーにはクリスチャン・マクブライドのバンドで名を高めたテリオン・ガリー(ドラムス)、最晩年のアンドリュー・ヒルのバンドにいたグレゴリー・ターディ(テナー・サックス、クラリネット)、個人的にはソウライヴのホーン・セクションで熱演していた姿が昨日のことのように思い出されるラシャーン・ロス(トランペット)などが揃っています。

選曲に関しても、いわゆるモンクゆかりの有名ナンバーをただ並べているという感じではありません。ビーズリーが大いにこだわってレパートリーを選び、納得いくまでアレンジをし、サウンドを磨きに磨きあげたところでオーディエンスに提示している、という印象を受けました。モンクのレコードを聴く限り、彼のアプローチは基本的にテーマ(作者のピアノと管楽器がユニゾンで演奏する場合が多い)→一定のコード進行・一定のリズムに沿った各演奏家のアドリブ・ソロ→テーマというモダン・ジャズの典型的形式ですが、ビーズリーの手法は各アドリブの間や背後に多彩なリフ(短い楽句)をはさみ、テンポをどんどん変化させ、新たに創作した別のコード進行によるパートもふんだんに挿入していくというもの。クラリネットとソプラノ・サックスをハモらせたり、モンクとは無縁の楽器だったエレクトリック・ベースやシンセサイザーを用いたり、フルートとエレクトリック・ベースのユニゾンで演奏されるリフを導入したり、非常に工夫された演奏という印象を受けました。"モンクの曲の中でも、特にとんでもなく難しいんだ"という紹介から始まった「Skippy」は、まずビーズリーの無伴奏ピアノ・ソロから始まり、その後、全員で演奏するところではテンポを速めたり遅くしたり(アドリブ奏者が変わると、リズムの速度も変わるのです)、さらにテリオンの超絶ドラム・ソロを経て再び無伴奏ピアノ・ソロになったと思ったら最も有名なモンク楽曲であろう「'Round Midnight」がまるまるワン・コーラスのスロー・バラードとして演奏され、さらにその後、猛烈な勢いでテンポが速まり、「Skippy」へ戻るという、凝りに凝った構成。これを見事にキメてしまうミュージシャンの高い実力と反射神経には唸らされるばかりでした。公演は本日も行なわれます。
(原田 2017 11.2)


Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2017 11.1 WED.
1st
1. CRISS CROSS
2. LITTLE ROOTIE TOOTIE
3. GALLOP’S GALLOP
4. LIGHT BLUE
5. SKIPPY
EC. BRAKE’S SAKE
 
2nd
1. BRAKE’S SAKE
2. GALLOP’S GALLOP
3. CRISS CROSS
4. UGLY BEAUTY / PANNONICA
5. EVIDENCE
EC. ASK ME NOW

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