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MATTHEW HERBERT'S BREXIT BIG BAND

artist ERIC MIYASHIRO , MATTHEW HERBERT

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


英国が生んだ鬼才音楽家マシュー・ハーバートが14年ぶりに「ブルーノート東京」に登場、変幻自在の音楽を繰り広げています。

ぼくが初めて彼のパフォーマンスに接したのは、たしか今世紀の初め頃だったと記憶しています。場所は、まだ新宿にあった頃のリキッドルームです。踊るような指揮ぶり、ガラクタのようなものをいろいろ用意して鳴らしながら生み出す強烈なリズム、美しいハーモニーの中に突如飛び込んでくるノイズ、鋭い眼光に衝撃を受けたことを思い出します。今回の公演では指揮をピート・ライトに任せていましたが、意表を突くサウンド、刺激的な電子音と生音の絡みは変わらぬ快感をもたらしてくれました。今回のプロジェクト名"ブレクジット・ビッグ・バンド"の"ブレグジット"とはBritainとexitを合わせた造語で、2019年にやってくるはずの"英国のEUからの離脱"を意味しています。マシューにとって思うところはたくさんあるのでしょうが、音楽は理屈抜きで楽しめます。そして「こんなこと、ジャズ系のライヴでは体験したことがない!」的な演出もたっぷりです。ぜひ、楽しむ気を全身にみなぎらせながらお越しいただけたらと思います。

マシュー、ピート、広い声域と豊かな声量の持ち主であるヴォーカルのラエル(Rahel Debebe-Dessalegne)のほかは、日本を代表する精鋭たちです。ステージ前方にマシュー、サックス・セクション、トロンボーン・セクションが並び、後方にピアノ、ベース(いずれもアコースティック)、ドラムス、トランペット・セクションが並ぶという独特な配列。凝った曲を引き締まったアンサンブルで表現しながら、場内の熱気を高めていきます。マシューは新聞紙を破る音をその場で"ダブ"し(結果、小粋なクリックノイズが生まれました)、その場で機械をつけて心臓の音をサウンドに取り入れ、Rattle(ガラガラ)を振り、「Strong」では渋い歌声も聴かせました。と同時に、オーケストラの音づくりには「マシューは、デューク・エリントンやオリヴァー・ネルソンなど古典的なジャズ・ビッグ・バンドを相当、聴いて曲を書いたのだろうな」と感じさせるところもあり、また、ビッグ・バンドというよりも"一座"的な雰囲気が漂うところは、マイク・ウェストブルックのオーケストラを想起させてくれました。古くからのジャズを愛するベテラン・ファンにも、ぜひ味わっていただきたい世界がここにあります。公演は本日まで!
(原田 2017 11.8)


Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2017 11.7 TUE.
1st & 2nd
1. THE TOWER
2. THE WORDS
3. SIMPLE MIND
4. THE YESNESS
5. BE STILL
6. HE DOESN’T SPEAK FOR ME
7. NAMES
8. WAITING
9. FOREIGN BODIES
10. STRONG
EC. THE AUDIENCE

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