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ROBERT GLASPER TRIO

artist ROBERT GLASPER

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


現代ジャズの台風の目のひとつ、ロバート・グラスパー・トリオがブルーノート東京の2017年度カウントダウン&2018年度ニューイヤーをディープに彩ります。メンバーはグラスパーのピアノ&フェンダー・ローズ、ヴィセンテ・アーチャーのアコースティック・ベース、デミオン・リードのドラムス、そしてDJサンダンス(ジャヒー・サンダンス)のターンテーブル。コンピレーション作品『ベスト・オブ・ロバート・グラスパー』も発売されたばかりという絶妙なタイミングでの来日です。ライヴを見てからCDを聴いても、CDを聴いてからライヴを見ても、エキサイトメントは保証されたも同然でしょう。

昨年の公演までは向かって左側にピアノが設置されていましたが、今回は右端に移動しています。そして他の3人はグラスパーの一挙一動に視線を送り、彼のピアノと会話するようにプレイします。セットリストは、ありません。グラスパーが弾き出すとメンバーがすかさずそれについてきて、調子を合わせつつ触発しあう感じです。初日ファースト・セットは、いままでぼくが見てきたグラスパー・トリオのライヴの中で最も、古典的なジャズ・ナンバーに寄せたプログラムであると感じました。アルバム『Covered』にも入っていた「Stella By Starlight」を徹底的なリハモナイズ、細分化したリズムで聴かせ(名ドラマー、トム・レイニーがこの秋に出したアルバム『Float Upstream』に入っている同曲と聴き比べるのも面白いのではと思います)、エンディング近くではリードが両手に持ったブラシをスネア・ドラムの上で目まぐるしく動かして波が寄せては返すようなサウンドを創り出します。しかもそのとき、右足のバスドラと左足のハイハットは、まるで時計のように"ドンッ、ゥチッ"と規則正しいパターンを繰り返しているのです。

「どこをどうしたら、こんなに興味深いリズム・パターンが思い浮かぶのだろう」と思いながら演奏に聴き入っていると、しだいに「Autumn Leaves(枯葉)」につながっていきます。グラスパーは楽想をどんどん広げて即興を行ない、ちょっとした休符のあとに「Solar」のメロディを演奏し始めました。マイルス・デイヴィスが1954年に吹き込んで広まった1曲です。アーチャーがニヤリとしながらベース・ラインを刻み、リードがおそろしく繊細なシンバル・ワークでピアノに絡みつきます。ハービー・ハンコック作「Actual Proof」では四者一体となったプレイで前半を疾走し、途中グラスパーが「スヌーピーとチャーリー・ブラウン」の挿入曲「Linus & Lucy」を長々と引用してムードを変えます。「この先、どう展開していくのだろうか」と思っていたら、ここしかないという見事なタイミングで「Actual Proof」の"キメ"が登場、すさまじい拍手が巻き起こりました。

冒頭とラストのメンバー紹介以外、MCは一切なし。ものすごい集中力で演奏が続きます。ぼくは、実に内容の濃い"儀式"を味わった気分に満たされました。チケットはほぼソールド・アウトですが、最新の空席状況はお電話で問い合わせいただけたらと思います。ロバート・グラスパー・トリオと過ごすカウントダウン&ニューイヤー、これは格別です! 公演は30日、31日(セカンド・セットはカウントダウン)、1月2日、3日と続きます。
(原田 2017 12.30)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2017 12.29 FRI.
1st
1. PACKT LIKE SARDINES IN A CRUSHED TIN BOX
2. STELLA BY STARLIGHT
3. IN CASE YOU FORGOT ~ AUTUMN LEAVES ~ SOLAR
4. ELECTRIC RELAXATION
5. HOW MUCH A DOLLAR COST
6. SIGN "O" THE TIMES ~ ACTUAL PROOF
 
2nd
1. SIGN "O" THE TIMES ~ ACTUAL PROOF
2. STELLA BY STARLIGHT
3. F.T.B.
4. PROTOTYPE
5. CALLS
6. IN CASE YOU FORGOT
7. LEVELS

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