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JUNKO ONISHI Very Glamorous Tour

artist 大西順子 , 挾間美帆

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ニュー・アルバム2作品『ヴェリー・スペシャル』と『グラマラス・ライフ』を同時リリースして大きな話題を集めている大西順子が、約1年半ぶりにブルーノート東京に登場しました。この2018年はまた、初リーダー・アルバム『WOW』の発売からちょうど25年というアニヴァーサリーでもあります。以前にもまして精力的な活動、大きなプロジェクトでファンを喜ばせてくれることになりそうです。

オープニングは伝説のピアニスト、ハサーン・イブン・アリの書いた「Almost Like Me」。ハサーンとマックス・ローチによるオリジナル・ヴァージョン(アルバム『The Max Roach Trio Featuring The Legendary Hasaan』に収録)はピアノとドラムスが掛け合いするかのように進行していきますが、大西順子(ピアノ)、井上陽介(ベース)、高橋信之介(ドラムス)は三者が絡み合うような形。ストライド調のフレーズをはさみつつ熱演する大西に井上のスラップ奏法が入り込み、高橋がリム(縁)を叩きながらそれを煽る瞬間は鳥肌ものでした。大西が書いたバラード「Arabesque」は、三人の繊細で格調高い一面が満喫できる一曲。終結部で高橋がブラッシュを使ってソロを行ない、やがてスティックに持ち替えると、絶妙なタイミングで「Fast City」へとつながっていきます。ジャコ・パストリアス在籍時のウェザー・リポートがレコーディングしたナンバーですが(アルバム『ナイト・パッセージ』)、「Birdland」や「Teen Town」のようには知られていない曲です。それをアコースティック編成で、4ビート・パートを交えながらシャープに料理し、スウィングしていくのですから痛快です。

ここで編曲指揮の挾間美帆、ぱんだウインドオーケストラからクラリネットの森卓也とバス・クラリネットの佐藤芳恵がステージに登場します。楽曲はジュゼッペ・ヴェルディ作「柳の歌 (オペラ『柳の歌』第4幕より)」。ウェザー・リポートから19世紀イタリアのロマン派へ・・・という選曲は相当ブッ飛んでいますが、不思議と違和感がありません。この日、披露されたのは、『ヴェリー・スペシャル』とはまた異なるリズム隊入りのヴァージョン。挾間はこの「ブルーノート東京」のために、改めてアレンジを施しました。幻想的な2本のクラリネットの響き、大西の鮮烈なピアノ・タッチ、挾間の卓越したハーモニ―感覚としなやかな腕の動き、控えめに躍動するベースとドラムスが、自分とクラシックの距離を近づけてくれました。

続いては『グラマラス・ライフ』で、こよなく美しいデュオ・プレイを大西と繰り広げた馬場孝喜が登場し、ステージ上で"音の対話"を届けます。大西がMCで語るところによると、ふたりはこのレコーディングで初めて本格的に知りあい、ただちに意気投合、CDに入りきらないほど多くのテイクを録音してしまったとのこと。馬場は十数年のキャリアを持つ奏者で、これまで西山瞳や芳垣安洋らと共演。粒立ちの良いシングル・トーン、滑らかなアドリブ、大西のソロ・パートをバックアップするときの多彩なコード(和音)など、聴きほれずにはいられない良さです。本編ラストは大西、井上、高橋、馬場による「Golden Boys」。チョーキングを用いた馬場の激烈なプレイ、それを迎え打つ大西の力強いピアノ。ファンキー&ストロングという言葉がぴったりのパフォーマンスでした。

ぼくは'93年以来、大西順子のステージを見続けてきましたが、今回ほど熱狂的でハッピーな夜はないのではと思います。盛りだくさんのステージは明日まで続きます。
(原田 2018 2.8)

SET LIST

2018 2.7 WED.
1st
1. ESSENTIAL
2. TIGER RAG
3. ALMOST LIKE ME
4. 柳の歌 (オペラ『柳の歌』第4幕より)
5. EASY TO LOVE
6. AFTER THE LOVE HAS GONE
7. GOLDEN BOYS
EC. 7/29/04 THE DAY OF (FROM "OCEANS 12")
 
2nd
1. ALMOST LIKE ME
2. ARABESQUE
3. FAST CITY
4. 柳の歌 (オペラ『柳の歌』第4幕より)
5. HOW DO YOU KEEP THE MUSIC PLAYING
6. AFTER THE LOVE HAS GONE
7. GOLDEN BOYS
EC. 7/29/04 THE DAY OF (FROM "OCEANS 12")

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