2018 3.24 sat., 3.25 sun., 3.26 mon.
CÉCILE McLORIN SALVANT
artist CÉCILE McLORIN SALVANT
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
アルバム『For One to Love』と『Dreams and Daggers』でグラミー賞"最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞"を連続受賞。新歌姫の座に躍り出たセシル・マクロリン・サルヴァントが、待望のブルーノート東京単独初公演を開催中です。ステージの両脇には大きな桜が飾られ、それもまた風流です。いままさに輝いているセシルのステージに、いっそうの華やぎが加わった印象を受けました。
セシルは1989年、フロリダ州マイアミで生まれました。父はハイチ出身、母はフランス出身。5歳からピアノを始め、8歳から聖歌隊で歌うようになりました。2010年にはセロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティションで首位となり(歴代首位にはグレッチェン・パーラト、マーキス・ヒル、ベン・ウィリアムス、アンブローズ・アキンムシーレなどがいます)、前後して自主レーベルから初アルバムも発表しています。ぼくがセシルの歌に最初に感銘を受けたのは、サックス奏者アーチー・シェップのアルバム『I Hear The Sound』で歌っていた「Quiet Dawn」という曲を聴いたときでした。ふくよかでまろやかな歌声に大いに好感を持ったものですが、あれよあれよという間に彼女はジャズ・ヴォーカル界のトップ・クラスに登りつめました。ブルーノート東京への登場は、2013年にデューク・エリントン・オーケストラのゲスト・シンガーとして訪れたとき以来。今回はもちろん、彼女が最も信頼するピアニストであるアーロン・ディール(ウィントン・マルサリス、ベニー・ゴルソンらとも共演。ケニー・バロンに学び、アート・テイタムやオスカー・ピーターソンを敬愛)を含む自身のユニットでの来日です。
セシルは事前にセットリストを作らず、会場の雰囲気に応じて歌う曲を決めていきます。初日のファースト・セットではミュージカル『マイ・フェア・レディ』からの「On the Street Where You Live」、バート・バカラック作「Wives and Lovers」、コール・ポーター作「All Through the Night」、レナード・バーンスタイン作「Lonely Town」、ボブ・ドロー作「Nothing Like You」などを聴かせてくれました。バカラックにしてもポーターにしても、もっと有名な曲はたくさんあるのですが、ちょっと渋めのナンバーをピックアップして、観客に快く届けていくのがセシル流。ファースト・コーラスはじっくりと歌い込み、セカンド・コーラスから徐々にフェイク(変奏)を加えていきます。幅広い声域を使ったうねるような歌い方にはサラ・ヴォーン、フェイクする時のトランペットのようなフレージングにはベティ・カーターとの共通点を、個人的には感じました。スキャットはしません。伴奏のミュージシャンも若き名手揃い。アーロンは粒立ちの良い音でイキのいいフレーズを挟み、ポール・スキヴィーはウッド・ベースの逞しい生音を存分に味わわせてくれました(ぼくはピアノ奏者ジョン・オニールのアルバム『ライヴ・アット・スモールズ』で聴いて以来、一度ナマで見たいと思っていたのです)。そしてカイル・プールは2012年のモンク・コンペでセミ・ファイナリストに選ばれたドラマー。ハイハットを2拍4拍で踏み、スムーズなシンバル・レガートを送り出し、バラードではブラッシュ・ワークを用いて香り高いプレイを聴かせるなど、まさしく超正統派のモダン・ジャズ・ドラムでリズム面の要を担っていました。
鳴りやまない拍手を受けて一度ステージを降りたセシルですが、もっと聴きたいというファンの気持ちは収まりません。オーラスで歌われたのは、まさしく必殺のア・カペラ「No Other Love」。ショパンの「練習曲作品10第3番ホ長調」を原曲にしたナンバーです。シンと静まった店内に、彼女の豊かな歌声で満たされるさまは圧巻でした。公演は本日、明日も続きます。期間限定で提供されるロゼワインを味わいながら、ぜひ新歌姫のステージをお楽しみください!
(原田 2018 3.25)
Photo by Tsuneo Koga
2018 3.24 SAT.
1st | |
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1. | COME BACK TO ME |
2. | ON THE STREET WHERE YOU LIVE |
3. | TELL ME WHAT THEY’RE SAYING CAN’T BE TRUE |
4. | WIVES AND LOVERS |
5. | ALL THROUGH THE NIGHT |
6. | I’M ALL SMILES |
7. | LONELY TOWN |
8. | NOTHING LIKE YOU |
9. | MAD ABOUT THE BOY |
10. | I WISH I COULD SHIMMY LIKE MY SISTER KATE |
11. | ISN’T IT ROMANTIC |
EC. | NO OTHER LOVE - SOLO |
2nd | |
1. | LET’S FACE THE MUSIC AND DANCE |
2. | SPOONFUL |
3. | IF A GIRL ISN’T PRETTY |
4. | FINE AND MELLOW |
5. | THE TROLLEY SONG |
6. | SO IN LOVE |
7. | SAM JONES’ BLUES |
8. | GUESS WHO I SAW TODAY |
9. | THE BEST THING FOR YOU (WOULD BE ME) |
10. | SOMEHOW I NEVER COULD BELIEVE |
11. | DEVIL MAY CARE |
EC. | JEEPERS CREEPERS |