原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

キューバ音楽の人間国宝オマーラ・ポルトゥオンド、ポーランドの歌姫アンナ・マリア・ヨペック、イタリアの精鋭ラファエル・グアラッツィ、カリブの血を引く気鋭ジャズ歌手セシル・マクロリン・サルヴァントと、ここしばらくのブルーノート東京は様々な"地球の声"を届けてきました。そして昨日からは、アメリカ・カリフォルニアが生んだレゲエ・バンド"ビッグ・マウンテン"が場内を素敵なヴァイブレーションで満たしています。

彼らの出演は、なんと17年ぶり。'88年の結成からちょうど30年という、絶好のタイミングでの再登場です。看板男ホアキン・"キノ"・マクウィニーの"黄金の声"は冴えわたり、「久しぶりにブルーノートに戻ってきたよ。君たちの調子はどうだい？」というフレーズひとつでオーディエンスの心をわしづかみにしてしまいます。'98年から参加し、音楽監督も務めるドラマーのポール・"グルーヴ・ガロア"・キャスティックも、もちろん名手ぶりを遺憾なく発揮。ダイアナ・キングやマキシ・プリーストと来日したときの姿を懐かしく思い出すファンも多数いらっしゃることでしょう。バスドラの踏み込み、たたみかけるようなスネア・ドラムのどちらも「ド迫力」という言葉がぴったりで、低音を強調したＰＡも興奮を倍加します。オードリー・チザム（チショルム）はウェイラーズのメンバーとしてもブルーノート東京に出演経験あり。今回も粘るようなソロ、シャープなリズム・カッティングを楽しませてくれました。

目下の最新アルバム『Perfect Summer』からのナンバー、他のアーティストの定番の"レゲエ化"、そして彼らの代名詞的楽曲「Baby I Love Your Way」などを織り交ぜたステージは、おいしいメニューのてんこ盛りといったところ。"絶対に気に入ると思うよ"という前置きから始まったビートルズ（ジョージ・ハリスン）の名曲「Here Comes The Sun」（ビートルズのカヴァー）、アル・グリーンの歌で大ヒットした「Let's Stay Together」（先日のBJザ・シカゴ・キッド公演でも少しフィーチャーされました）なども実に軽やかなレゲエに生まれ変わっていました。「俺が生まれ育ったカリフォルニアでは2種類の言語が話されていた。ひとつはイングリッシュ、もうひとつはスパニッシュだ」というMCに続いた「Buscar La Luz」（光を求めて）はスペイン語による歌唱で、ラテンとレゲエの高密度な融合という印象を受けました。「我々は同じ惑星に住んでいる。地球をシェアしながら暮らしているんだ。子供たちのためにも、この惑星を大切に維持していかなければならない」という語りから始まったのは、'95年のアルバム『Resistance』からの「Where Do The Children Play」。一語一句を大切に歌い込んだ、熱いメッセージ・ソングです。

後半は"メロウ・セット"といえばいいのでしょうか、「I Would Find A Way」、「Carribean Blue」、そして欧米のヒット・チャートを席巻した「Baby I Love Your Way」などが休みなしで続きます。場内はいつしかダンスフロア状態に。ラストはボブ・マーリーへの敬意を込めて、彼が遺した名曲「Exodus」がプレイされました。

「レゲエは世界をより良いものにするための音楽なんだ。ビッグ・ラヴ・フロム・ビッグ・マウンテン！」と語るキノ。愛と白熱のステージは本日も行なわれます。
(原田 2018 3.28）

Photo by Tsuneo Koga