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MARI NATSUKI "MARI de MODE 2"

artist 夏木マリ

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


昨年1月に開催された『MARI NATSUKI"MARI de MODE"』から、早くも1年3か月。歌手・俳優・声優としてジャンルレスな活動を続ける夏木マリが、ブルーノート東京に帰ってきてくれました。タイトルは『MARI NATSUKI"MARI de MODE2"』。2は"ドゥ"と読みます。しかも今回は2デイズです。

店内はドレスアップした男女で超満員。レパートリーは『九月のマリー』から『戦争は終わった』に至る、小西康陽がプロデュースした作品からのものが中心です。バンドがボサ・ノヴァ風ナンバー「むかし私が愛した人」のイントロを奏で始めると、夏木マリが客席の合間を縫うように登場します。髪型、髪の色、衣装、靴、どれをとってもスタイリッシュの一言に尽きます。左腕を脇にあて、右手の指をスナップしながら歌う姿は、そのまま絵画になりそうなほどサマになっていました。続く「港のマリー」では一輪のバラの花を手に持ち、"ファンキーなサンバ"と形容したくなるようなリズムに乗って軽やかに歌います。「私は私よ」で聴かせたスキャットも鮮やかでした。

バック・メンバーは久米大作(ピアノ、キーボード)、金澤英明(ベース)、竹上良成(テナー・サックス、フルート)、福原将宜(ギター)、山内陽一朗(ドラムス)、斉藤ノヴ(パーカッション)という選りすぐりの面々。伝説のジャズ・ピアニスト/作曲家の名前を曲名に用いた「セロニアス・モンク」では彼ら全員のソロも楽しむことができました。"朝から私の頭の中でセロニアス・モンクが鳴り響く"的な歌詞も、なんともジャズ・ファンの心をくすぐるのです。また「ミュージシャン」では"彼はレスター・ヤング、私はビリー・ホリデイのつもりで・・・"という描写の歌詞も登場します。そこを聴いていてぼくは、ジョニ・ミッチェルの歌う「グッドバイ・ポークパイ・ハット」を思い出しました。

本編ラストは「私のすべて」。小西康陽のユニット"ピチカート・ファイヴ"のCDでは野宮真貴が小悪魔的に歌っていました。この夜のヴァージョンはさらにテンポをアップし、しかもマイナー・キー基調に作り替え、夏木マリは"わがままだけど許されちゃうきれいな女性のひとりごと"的な歌詞を、メロディを投げつけるがごとく歯切れよく歌い切ります。この曲の後に飛び出したアンコール部分がまた圧巻なのですが、これに関しては当日いらした方のためのスペシャル・シークレットにしたいと思います。

"それでそれで、次の展開はどうなるの?"と前のめりにならずにはいられない物語性に富んだ歌詞、それをしっかり聴き手に伝える明瞭な発音と歌心、ヴォーカルを徹底的に引き立てる趣味の良い伴奏。それらが一体となった、とびきりぜいたくなひとときを味わいました。夏木マリとブルーノート東京はこのライヴのために、カクテルや食事のコラボレーションも行なっています。それらを賞味しつつ、本日もジャジーでシアトリカルな世界を満喫してみませんか。
(原田 2018 4.1)


Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2018 3.31 SAT.
1. むかし私が愛した人
2. 港のマリー
3. カウボーイ
4. 私は私よ
5. セロニアス・モンク
6. 誘惑されて棄てられて
7. あしたの私
8. いちばん好きなもの
9. アルコール
10. 惚れぐすり
11. 二の腕
12. ゴリラ
13. ミュージシャン
14. きれいな顔の女
15. ローマをみてから、死ね
16. 鎮静剤
17. 私のすべて
EC1. Over the Rainbow
EC2. Summer Time

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