2018 5.29 tue., 5.30 wed.
KAT EDMONSON
artist KAT EDMONSON
唯一無二の声と佇まい。レトロな行き方の奥から"音楽への純真"が溢れ出る
強い印象を残す、癖を持つ歌声。それだけで、彼女は聞く者におおいに働きかける。しかも、そんなある意味"太い"と形容もできる歌声を披露しているのは、小柄で華奢な、どこか控えめな佇まいも持つ可憐な女性なのだ。その声と容姿の乖離(かいり)もまた、見る者に多大な興味を与えよう。そして、彼女は人前でパフォーマンスする重要な要件を持つ人物であるとも思わせるのだ。
子供のころから古いハリウッド映画に夢中になり、ビング・クロスビーやフレッド・アステア、ジュディ・ガーランドらに憧れ、タイムレスなヴォーカル表現を鋭意求めているシンガーがキャット・エドモンソンである。全曲オリジナルを固め、自らプロデュースも担当した新作『オールド・ファッションド・ギャル』とともにやってきた彼女の2度目となるブルーノート東京公演(歌詞作りのうまさにも感心してしまう同作の曲はほとんど披露した)は、よく整備されたチーム・ワーク抜群のジャジーなカルテットを従えて持たれた。そして、簡潔に書いてしまうなら、レトロスペクティヴというにふさわしい、うれしい蜃気楼のような手触りを与えるパフォーマンスを彼女は披露。その様は、米国の持つ往年の大衆ポップ/ジャズの豊かさや円満な輝きを聞き手に再認識させるものだった。
そんな真価を自然に出すエドモンソンは、時間軸やそこに付帯する情緒を自在に操る"音楽の旅人"という形容もできるだろうか。そして、その奥からは、周りの友達とは趣味が異なる大人の音楽を愛好し続けてきたからこその、強い音楽愛や自分の進み方への確信のようなものがすうっと浮かび上がる。そりゃ、受け手が感情移入できないはずがない。
3年前の初来日時に取材したおり、なにより自作曲を充実させたいこと、そして映画の世界にも進みたいことを語っていたエドモンソン。事実、彼女はウディ・アレンが監督した1930年代を扱った映画「カフェ・ソサエティ」にもナイト・クラブのシンガー役で出演を果たした。これからも印象的な歌声やキャラクターとともに、一歩一歩いろいろな夢を彼女は実現させていくのではないか。観客に健気に働きかける彼女の姿に接しながら、そんなことも思った。
text : 佐藤英輔
出版社勤務を経て、フリーランスの物書きとなる。グルーヴと飛躍する感覚と酔狂さがある音楽が好み。ライヴを中心に扱ったブログはこちらから
Photo by Makoto Ebi
2018 5.29 TUE.
1st | |
---|---|
1. | SPALKLE AND SHINE |
2. | A VOICE |
3. | NOT MY TIME |
4. | IF |
5. | CHAMPAGNE |
6. | JUST LIKE HEAVEN |
7. | CANOE |
8. | I’D BE A FOOL |
9. | HOW'S ABOUT IT BABY |
10. | PLEASE CONSIDER ME |
11. | LONG WAY HOME |
12. | WHAT ELSE CAN I DO |
13. | LUCKY |
14. | WHO'S COUNTING |
15. | OLD FASHIONED GAL |
EC. | YOU SAID ENOUGH |
2nd | |
1. | OLD FASHIONED GAL |
2. | HOW'S ABOUT IT BABY |
3. | WHAT ELSE CAN I DO |
4. | I’D BE A FOOL |
5. | LUCKY |
6. | CANOE |
7. | PLEASE CONSIDER ME |
8. | HOPELESSLY BLUE |
9. | LONG WAY HOME |
10. | JUST LIKE HEAVEN |
11. | ALL THE WAY |
12. | CHAMPAGNE |
13. | YOU SAID ENOUGH |
14. | NOT MY TIME |
15. | A VOICE |
16. | SPALKLE AND SHINE |
EC. | SUMMER TIME |