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TONY MONACO, YOSUKE ONUMA & GENE JACKSON @COTTON CLUB

artist TONY MONACO , 小沼ようすけ

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


トニー・モナコ(オルガン)、小沼ようすけ(ギター)、ジーン・ジャクソン(ドラムス)。2011年に結成されたワールドワイドなトリオが9月28日、ついにブルーノート東京に出演します。ぼくはそれに先駆けて9月18日、彼らの結成の地である丸の内・コットンクラブでライヴを楽しみました。

オープニング・ナンバーは「Perdido」。トロンボーン奏者ファン・ティゾールが書き、デューク・エリントン楽団の演奏で世に出たナンバーです。1940~50年代には、本当に多くのミュージシャンにカヴァーされました。しかし最近は、やはり同様の出自を持つ「Caravan」に比べて、まったくといっていいほど取り上げられていない印象を受けます。無論3人のパフォーマンスは快調そのもの、メロディアスな要素もドライヴ感も満点で、ぼくは「よくぞこの曲に光を当ててくれました」「もっとこの曲を手がけるミュージシャンが出てきてもいいのに」という気持ちを抑えられませんでした。パット・マルティーノからも高く評価されているトニーのオルガンはダイナミクス(音の強弱)に富み、怒涛の如く押し寄せるフレーズ、目にもとまらぬ運指という点ではジョーイ・デフランセスコと双璧でしょう。小沼は指弾きでソロにサポートに極上の音色を聴かせ、ジーンはハービー・ハンコックと演奏していた時に聴かせたポリリズムの限界に挑むようなプレイとは一味異なる大らかなスイング感を醸し出します。

次も、近年のジャズ界ではあまり演奏されない「There Will Never Be Another You」。チェット・ベイカー、ソニー・ロリンズ、バド・パウエルらが取り上げたのも60年も前のことになってしまいました。トニーはドローバーを巧みに操作して、"モダン・ジャズ・オルガンの父"ジミー・スミスが吹き込んだヴァージョン(1957年のアルバム『The Sounds of Jimmy Smith』に収録)を彷彿とさせる倍音たっぷりのプレイを展開。鍵盤ではなく客席のほうに顔を向け、百面相のような表情をしながらハミングを混ぜてメロディを奏でます。その姿は、オルガン版エロール・ガーナーといったところでしょうか。

スミスへの敬愛を表出した後は、トニーと同じオハイオ州出身の伝説的オルガン奏者ドン・パターソンが書いたモード・ジャズ曲「S'bout Time」へ。作者の遺したレコードではサックス奏者ブッカー・アーヴィンが乗りまくっていましたが、ここでは小沼が圧倒的な指さばきでフレーズを連ねます。トニーが紡ぐ左手ベース・ラインと右手アドリブの動きときたら、まるでそれぞれが別の生き物であるかのようです。彼はまた、カーペンターズで有名な「A Song for You」で渋い喉を聴かせてくれました。

これまで『ライブ・アット・コットンクラブ・ジャパン』、『As One』というアルバムを残している3人ですが、その音楽世界はさらなる熟成と発展を続けています。カジュアルなジャズの楽しさ、オルガン・ジャズの普遍的な魅力を届ける黄金トリオのライヴを見逃すわけにはいきません!
(原田 2018 9.21)


Photo by Yuka Yamaji


●TONY MONACO, YOSUKE ONUMA & GENE JACKSON
2018 9.28 fri. ブルーノート東京
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