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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

"音楽界の首領"クインシー・ジョーンズは、半世紀以上に渡って数々の若手逸材をシーンに紹介してきました。そういう意味でボブ・ジェームスは、この月曜に圧倒的な来日公演を行なったジェイコブ・コリアーの大兄貴分といえる存在です。ミシガン大学に入学したボブは作曲を専攻、ピアノを副専攻とし、1961年に学士号、63年に修士号を取得。その間の62年にはトリオを組んでノートルダム・ジャズ・フェスティバルのコンペティションに応募し、グランプリを獲得するのですが、このときの審査員のひとりがクインシー・ジョーンズでした。無名同然だったボブ・ジェームス・トリオはクインシーの尽力でニューヨークに進出、マーキュリー・レコードと提携してファースト・アルバム『ボールド・コンセプションズ』を制作しました。いうなればピアノ、ベース、ドラムスというトリオ編成はジャズ・ミュージシャンとしてのボブの原点であるのです。

今回の公演は、その"原点"といえる楽器編成で行なわれています。'70~'80年代には管楽器や打楽器を加えた大所帯のバンドも率いていましたし、'90年代以降は4人組ユニット"フォープレイ"でも人気を集めてきたボブですが、トリオで彼のプレイをじっくり聴ける機会は希少でした。彼のピアノ・タッチやアレンジに魅了されている方にとって今回の公演は、これ以上ないメニューといえるのではないでしょうか。共演者は最新作『エスプレッソ』と同じく、百戦錬磨の名手ビリー・キルソン(ドラムス)と、マイケル・パラッツォーロ(アコースティック・ベース)。マイケルは2013年に大学を卒業したばかり。ウィントン・マルサリスや大西順子との共演でも知られるロドニー・ウィテカーに師事した気鋭です。

演奏レパートリーは最新作からの「Bulgogi」(朝鮮半島の料理"プルコギ"の英語名。言葉の響きがすごくジャズっぽいので曲名にしたとのこと)、20年ほど前に来日した時に初めて訪れたイタリアン・レストランの名をとった「II Boccalone」など食べることを愛するボブのキャラクターを反映したものから、フュージョン全盛時からの人気レパートリー「Westchester Lady」、「Night Crawler」、さらに1920~30年代に大活躍したピアニスト/シンガーのファッツ・ウォーラー作曲の「Ain't Misbehavin'」(新作にも収められています)等、実にバラエティに富んだものでした。個人的には1974年のCTI盤『ボブ・ジェームスI』に収められていたカヴァー曲「Feel Like Makin' Love」がプレイされたのも嬉しかったですし(もちろんフェンダー・ローズによる演奏)、『エスプレッソ』からの「Mojito Ride」はボブのルーツのひとつといえる前衛クラシック~現代音楽と、スムース・ジャズ風味が真正面から結びついた、いかにも彼ならではの意欲作です。

さあ、本日からのステージではどんなプレイで楽しませてくれることでしょうか。ビリーとマイケルのプレイにもぜひ注目しつつ、15日まで続く公演を満喫していただけたらと思います。

(原田 2018 10.13)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2018 10.12 FRI.
1st & 2nd
1. BULGOGI
2. FEEL LIKE MAKING LOVE
3. NIGHT CRAWLER
4. AIN’T MISBEHAVIN’
5. TOPSIDE
6. IL BOCCALONE
7. SUBMARINE
8. MOJITO RIDE
9. WEST CHESTER LADY
EC1. ANGELA

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