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YAMANDU COSTA @KAMEIDO CULTURAL CENTER / CAMELLIA HALL

artist YAMANDU COSTA

REPORT

7弦ギターやブラジル的音楽観の素敵を体現する、稀有のソロ・ギター表現。

 ヤマンドウ・コスタのソロによる公演を、一足先に亀戸文化センター カメリアホールで10月27日に見た。

 なんの気負いもなく、どこかユーモラスな感じでステージに登場した彼は、さりげなくも、円満さと余裕あり。その佇まいが、まず良い。そして、ギターを爪引き出すと、とたんに魅惑の音珠が次々に手元から舞い上がる。その演奏はとても繊細にして大胆、技巧に満ち、同じギターを弾いているのにかかわらず音色が多彩でもある。

 そんなギター演奏を聴かせるヤマンドウ・コスタは、1980年ブラジル最南部のリオ・グランデ・ド・スル州に生まれ、子供の頃からギターに親しんだ。現在、彼が手にしているのは低音の弦が一本多い7限のギター。それはブラジルの優美にして即興性にも富むヒストリカルな音楽様式であるショーロ縁の楽器であり、彼の根本にはショーロがある事実を知らせる。7弦ギターを使うことで、彼は複雑にしてより豊穣なメロディやハーモニーやベース音を魔法のように紡ぎ出してしまう。その秀でた効用をストレートに表出するために、彼はソロという演奏フォーマットを選んでいると、コスタのパッション溢れる演奏に接すると思いたくもなる。曲も、その場で思うまま決めているという。

 技巧と情緒に満ちた、コスタだけの、孤高のソロ表現。なんて書くと、とっても厳しく、難しい感じになってしまうかもしれないが、彼のパフォーマンスは歓びやしなやかさに満ちる。それは、何より彼が秀でた歌心の持ち主で、奔放にして人間的な歌を歌っていると思わせるからではないか。そんなコスタは随所でスキャットや口笛もギターを弾きながら入れる。そのたまらず歌い出してしまうという風情の、チャーミングなことと言ったなら!  

 そして、そうした作法から浮かび上がるのは、ブラジルという音楽大国の持つ、音楽に対する快楽的な正の感覚。彼の演奏はショーロをはじめとするブラジル音楽、他の南米音楽、クラシック、ジャズなど様々なものを俯瞰していると言える。だが、そうした行き方もブラジルの重なり合うことを拒まないおおらかな心地ありきであることも、皮膚感覚で納得させられるのではないか。

 <7弦ギターの魔法>、<ソロ演奏者の闊達>、<ブラジル人音楽家の機微>、<歌心を山ほど抱えた音楽家の味わい深さ>......。ヤマンドウ・コスタはそういう数々の素敵をなんとも自然体で出していた。深いため息とともに、これは喝采するしかないじゃないか。


text : 佐藤英輔
出版社勤務を経て、フリーランスの物書きとなる。グルーヴと飛躍する感覚と酔狂さがある音楽が好み。ライヴを中心に扱ったブログはこちらから


●YAMANDU COSTA
2018 11.3 sat. ブルーノート東京
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