12.14 fri., 12.15 sat. @Cotton Club / 12.16 sun., 12.17 mon. @Blue Note Tokyo
RON CARTER TRIO @COTTON CLUB
artist RON CARTER
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
毎年、さまざまな組み合わせで来日しては楽しませてくれる巨匠ロン・カーター。今回は久々にラッセル・マローン(ギター)、ドナルド・ヴェガ(ピアノ)との通称"ゴールデン・ストライカー・トリオ"によるステージです。2012年に「コットンクラブ」でライヴ録音された『コットンクラブでカクテルを』から6年、トリオのコンビネーションはさらに緊密になりました。明日16日からブルーノート東京公演が行なわれますが、ぼくは昨日のコットンクラブ初日公演に足を運びました。
スーツとネクタイでビシッと決めた3人はステージに登場するや否や、深々と一礼します。フォーマルな雰囲気が漂う中、ロンは開口一番「私のリヴィング・ルームにようこそ」と語り、場内をなごませます。リーダーのベースがクローズアップされるのは当然かもしれませんが、ぼくはドナルドの粒立ちのよいタッチ、コード(和音)とシングル・ノート(単音)を小気味よく配分したラッセルのプレイに感銘を受けました。ロンの愛奏曲である「My Funny Valentine」は、まずドナルドのソロ・ピアノから始まります。左手をあえて休ませ、右手の単音でゆっくりと旋律を奏でていきます。一切の飾りつけなし、リチャード・ロジャースが書いた原曲の骨格をあぶりだすようなアプローチです。そしてサビの部分から、ロンのダブル・ストップ(重音)を使ったベースが勢いよく入り込んできます。個性的なイントネーションでメロディ・ラインに絡みついたと思いきや、やがて"ンダダダッ、ダッ"というリズミカルなフレーズを繰り返し、ドナルドのアドリブを鼓舞していきます。
「You Are My Sunshine」はロンの無伴奏ベース・ソロ。'70年代や'80年代は「Willow Weep For Me」をよく独奏していた記憶があるのですが、近年はこの曲がテクニックのショーケースといったところでしょうか。あのよく知られたメロディをニュアンスを変えてリピートし、何度かJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番:プレリュード」の一節も盛り込みつつ、ワン&オンリーの世界を展開します。最後の音が消えたとたん、超満員の会場から割れんばかりの拍手と声援。ニッコリしたロンはトリオによる「Soft Winds」へとプログラムを続けました。ベニー・グッドマンやバーニー・ケッセルなどが'40~'50年代によく演奏した1コーラス16小節のシンプルな曲ですが、ロン、ドナルド、ラッセルの3人はここにいろんなハーモニーを付け加え、テンポをこれでもかと変えて、ドラマティックに迫ります。ラッセルはハーブ・エリスやタル・ファーロウを彷彿とさせる"ボンゴ・エフェクト"(ギターのピックアップを叩いて打楽器のような音を出す)も披露。後半では突如倍テンポになり、オスカー・ピーターソン・トリオばりのかっこいい"キメリフ"(もともとの「Soft Winds」にはなかった)まで付け加えて、とてもドラムレス・トリオとは信じがたいほどダイナミックなエンディングへともつれ込みました。
当意即妙の展開と、ものすごい一体感。ブルーノート東京でも3人は、絶好調を維持しながら極上のライヴを届けてくれることでしょう。
(原田 2018 12.15)
Photo by Yuka Yamaji
●RON CARTER TRIO
2018 12.14 fri., 12.15 sat. コットンクラブ
2018 12.16 sun., 12.17 mon. ブルーノート東京
2018 12.14 FRI.
1st | |
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1. | EDDIE'S THEME |
2. | CEDAR TREE |
3. | OPUS 5 |
4. | MY FUNNY VALENTINE |
5. | YOU ARE MY SUNSHINE |
6. | SOFT WINDS |
EC. | THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU |