原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

先月末から今月上旬にかけてブルーノート東京に初登場し、感動的なパフォーマンスを披露した名プロデューサー/ソングライター＝デイヴィッド・フォスター。セリーヌ・ディオン、マイケル・ブーブレなどの才能をいち早く見出し、広く世に紹介した彼が、育成からプロデュースまで手がける"新歌姫"がブレナ・ウィテカーです。勢いにのる彼女が、ブルーノート東京の今年のクリスマス・シーズンを彩ります。

スーツとネクタイでビシッとキメたバンド・メンバーがスウィンギーなイントロを繰り広げる中、'50年代のアメリカのファッション雑誌から飛び出してきたような、どこかノスタルジックな美貌を持つブレナが颯爽と登場します。オープニングは代表曲「Black And Gold」。サックス奏者マット・デメリット（ダイアナ・クラールの『ウォールフラワー』にも参加しています）を中心とする厚みのあるホーン・セクション、快く弾むリズムにのって、ブレナは1曲目から卓越した実力を発揮します。レパートリーは本当に多彩。先日亡くなったナンシー・ウィルソンに捧げて「The Very Thought of You」をしっとりと歌い、やはり彼女のフェイヴァリット・シンガーであるペギー・リーが大ヒットさせた「Fever」も快唱（マドンナのカヴァー・ヴァージョンをご記憶の方もいらっしゃることでしょう）、プリンスの「Kiss」では曲中で踊りながらファンキーそのもののパフォーマンスで魅せてくれました。画像ではひたすらスタイリッシュな彼女ですが、とてもユーモラスでノリがよいキャラクターの持ち主で、歌声には繊細さと逞しさが同居しています。さすがデイヴィッド・フォスターの心を動かしただけのことはあるなあ、と思いました。ブレナの尊敬する歌手はナンシーやペギーのほかにダイナ・ワシントン、ルース・ブラウン等。20世紀に大活躍したシンガーへの敬意を忘れず、それを現代に生かしている姿にも好感が持てます。

もちろんクリスマス・ソングの数々も聴くことができました。「Jingle Bells」をラテン風にアレンジした「Jingle Bells Cha Cha」は偉大なエンターテイナー、パール・ベイリー（ドラム奏者ルイ・ベルソンとのおしどりコンビでも知られていました）の持ち歌からのカヴァー。こうした選曲ひとつからも、ブレナのエンタテインメントに対する深い造詣と愛情が伝わります。近年ではマイケル・ブーブレやサム・スミスもとりあげていた「Have Yourself a Merry Little Christmas」では歌詞を語りかけるようなアプローチを行ない、"日本では、クリスマスは恋人たちのロマンティックな日でもあるって聞いたわ"という前置きに続いては、狂おしいまでの恋心を綴る「I' ve Got a Crush on You」を歌い込みました。オーラスは、アカペラによる「Silent Night」。"グッドナイト、サンキュー"と言った後に投げキッスをして、ブレナはステージを去りました。

歌姫のハートウォーミングなクリスマス・ライヴは25日まで続きます。

(原田 2018 12.23)

Photo by Takuo Sato