2018 12.27 thu., 12.28 fri.
熱帯JAZZ楽団 / THE 忘年会LIVE 2018
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
今年もこの時期がやってきました。結成23周年、世界的な支持を受ける熱帯JAZZ楽団が真冬の東京に熱風を運びます。ブルーノート東京で"THE 忘年会 LIVE"を開催するのは今年で4年目。今回も磨き抜かれた演奏、鮮やかなアレンジ、楽しさあふれるMCでエンタテインメントの魅力を届けてくれます。
オープニングはアルバム『熱帯JAZZ楽団 XVII~The Best from Movies~』より、「反逆のテーマ(特別狙撃隊 S.W.A.T.)」。スリルとサスペンスを感じさせるテーマ・メロディを奏で始めてすぐ、超満員の客席から自然発生的に手拍子が巻き起こります。"熱帯JAZZ楽団の突撃隊長"こと藤陵雅裕もアルト・サックスをこれでもかと吹きまくり、これ1曲で場内の空気は完全に"熱帯色"に染まってしまったといっていいでしょう。
続いてはスウィング系ビッグ・バンドの大定番「Sing,Sing,Sing」。約80年前、ベニー・グッドマン・オーケストラがジーン・クルーパのドラムスをフィーチャーした名演を残しています。この曲をとりあげる時、ミュージシャンはその歴史的ヴァージョンに沿って演奏することが多いというのがぼくの見解ですが、熱帯JAZZ楽団はカヴァーというよりも"再創造"という感じです。サックス・セクション全員が立ち上がって華麗なチェイスを繰り広げ、松島啓之も熱気たっぷりのトランペット・プレイを披露。その背後では森村献が素晴らしく粒立ちの良いピアノ・タッチでソリストを鼓舞し、リズム隊全員がうねりにうねります。スウィング系ビッグ・バンドを聴き込んだ方であればあるほど、「この曲にこんな解釈があったのか!」と、快い驚きに包まれるに違いありません。
優れた作曲家を擁しているのも熱帯JAZZ楽団の良さです。自身のバンド"オバタラ・セグンド"でも旺盛な活動を続けるトロンボーン奏者・中路英明が書いた「Ruinas」はホレス・シルヴァーやジェリー・ゴンサレスの音作りも彷彿とさせるナンバー。作者のトロンボーン・ソロを筆頭に、モダン・ジャズとラテンの正面衝突と呼びたくなるサウンドでリスナーを興奮に導きます。佐々木史郎作曲の「Coconuts Baby」では彼のトランペット・プレイはもちろん、バリトン・サックスの中村尚平やコンガの岡本健太など気鋭メンバーのプレイも満喫できました。そしてリーダーのカルロス菅野は今回もパーカッション、ヴォーカル、MC、指揮(今回は指揮棒を用いました)などで大忙しのパフォーマンス。渋い歌声が冴えるヴォーカル・ナンバーは「Fly Me to the Moon」でした。その他、ウェザー・リポートの隠れ名曲「Palladium」("同バンドのサックス奏者ウェイン・ショーターが、ブロードウェイ53丁目にあったラテン系ボールルーム「パレイディアム」に思いを馳せて書いた"ときいたことがあります)、必殺の「September」など、大サービスのプログラムで満腹感を味わわせてくれました。
"THE 忘年会 LIVE"は本日も開催されます。
(原田 2018 12.28)
Photo by Takuo Sato
2018 12.27 THU.
1st | |
---|---|
1. | S.W.A.T |
2. | SING, SING, SING |
3. | RUINAS |
4. | FLY ME TO THE MOON |
5. | PALLADIUM |
6. | COCONUTS BABY |
7. | CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU |
EC. | GETAWAY |
2nd | |
1. | S.W.A.T |
2. | SING, SING, SING |
3. | RUINAS |
4. | FLY ME TO THE MOON |
5. | PALLADIUM |
6. | COCONUTS BABY |
7. | CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU |
EC. | SEPTEMBER |