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MARCUS MILLER "LAID BLACK" with special guest BUTTERSCOTCH Countdown & New Year Live

artist BUTTERSCOTCH , MARCUS MILLER

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ニュー・アルバム『Laid Black』が第61回グラミー賞の最優秀ポップ・インストゥルメンタル部門にノミネート。スーパー・ベーシスト、マーカス・ミラーの公演が昨日から始まりました。ブルーノート東京の年末年始はファンク、グルーヴ、そして即興演奏の醍醐味に満ちています。

"会心の作"の世界をライヴでたっぷり聴いてもらいたいということなのでしょうか、「7 T's」、「Untamed」、「Sublimity」と新作からのナンバーが続きます。マーカスのベースは重厚なトーンで躍動感たっぷりのリズムを送り出し、あるときはテーマ・メロディを奏で、あるときはメロディアスに、ときにワイルドにソロを繰り広げます。「Untamed」では4弦→5弦→4弦と楽器を持ち替えて、4弦ではサポート、5弦ではまるで歌っているかのようなソロを披露。持ち替えの間は、当然ながらベースの音が聴こえなくなるのですが、そこはキーボードのジュリアン・ポラックが巧みなコード・ワークでフォローします。トランペットのラッセル・ガンが参加しているのも個人的には嬉しいものでした。故ロイ・ハーグローヴの2歳下である彼は、'90年代半ばに『Young Gunn』というアルバムでデビューしました。そのジャケットを見たときは"いよいよヒップホップ世代のジャズマンが出てきたな"と思ったものですが、以降も『Ethnomusicology』シリーズ(現在まで6作あります)を中心に、ジャズやヒップホップ~R&Bをミックスしながら独自の活動を続けています。強い音、豊かなイマジネーションとスタミナはラッセルの大きな強みです。

中盤からはスペシャル・ゲスト、バタースコッチとのコラボレーション。いちはやく日本に到着した彼女は前日にJ-WAVEの番組や新宿ブルックリンパーラーにも登場、万全のコンディションでこの日を迎えました。口(くち)トランペット・プレイ、ヒューマン・ビートボックス、エモーショナルな歌声を次々と繰り出しながら、マーカスと絶妙な"音の対話"を展開します。「Cantaloupe Island」では2本のマイクを使ってパフォーマンスしましたが、その口の動きは、あまりにも速すぎるためか逆に止まっているふうにも見えて、まるで腹話術師のようです。すっかり驚嘆させられました。これが初来日とのことですが、今後のさらなる人気上昇は間違いのないところでしょう。

バタースコッチの熱演を受けてさらに沸く場内に、最新作の1曲目に入っていた「Trip Trap」が響き渡ります。メイン・ソリストはマーカスです。必殺のスラップ奏法はもちろん、親指・人差し指・中指を使って弦をかきむしるように弾いたり、2フィンガー奏法を用いたり、ジミ・ヘンドリックスが憑依したかのような狂乱の弾きまくりを聴かせてくれるかと思えば一転、華麗なコード・ソロを繰り出すなど、まさにグルーヴとテクニックのショウケースといったところ。さらにラッセルとアルト・サックスのアレックス・ハンが向かい合い、延々とソロ・チェイスを行ないます。このときのマーカスはバックに回り、ひたすら重厚な低音で彼らを鼓舞します。マーカスの公演を一度、最初から最後まで体験すれば、誰もがベースという楽器の持つ奥深さとかっこよさに惚れ込んでしまうことでしょう。

マーカスのバンドとバタースコッチの共演はカウントダウン公演も含めて1月4日まで続き、翌5日にはマーカスとブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロの公演が行なわれます(一夜限り)。グルーヴ満載の年末年始を、ぜひお迎えください!
(原田 2018 12.30)
Photo by Takuo Sato

SET LIST

2018 12.29 SAT.
1st
1. 7-T'S
2. UNTAMED
3. SUBLIIMITY 'BUNNY'S DREAM'
4. SUMMERTIME
5. CANTALOUPE ISLAND
6. TRIP TRAP
EC. PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND
 
2nd
1. 7-T'S
2. UNTAMED
3. SUBLIIMITY 'BUNNY'S DREAM'
4. SUMMERTIME
5. CANTALOUPE ISLAND
6. TRIP TRAP
7. HOW GREAT THOU ART
8. PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND
EC. TUTU

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