原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

野外フェス「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN　2015」で一度だけ行なわれたドリーム・プロジェクトが、年明け早々「ブルーノート東京」でまさかの復活です。パット・メセニーと、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロのコラボレーションが本日まで行なわれています。

オープニング・ナンバー「Trains」では百戦錬磨の小池修、続く「Oops」では気鋭の庵原良司と、各世代のトップランナーというべきテナー・サックス奏者が妙技で魅了したあと、エリックの紹介を受けて、リンダ・メイ・ハン・オウとパット・メセニーがバンドスタンドに登場します。リンダのベース・プレイは"堅実かつ自由"というべきもので、ソロ・フレーズも雄弁そのもの。今回の公演で、彼女に対する認識はさらに高まることでしょう。そしてパットはエレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、ギター・シンセサイザー、シタール・ギターを駆使してカラフルでメロディアスな世界を繰り広げました。4年前のフェスでは「Homage」（パットが敬愛するドイツのベース奏者、エバーハルト・ウェーバーに捧げられた）という大作も披露されましたが、今回それは含まれず、より多彩な楽曲をフィーチャーしたプログラムになっています。セットリストについてはぜひ実際のステージに足を運んでご確認いただきたいのですが、"あの曲がオーケストラ編成で演奏されると、こういう風に響くのか"という驚きと喜びに包まれることは間違いありません。"パット・メセニー・グレイテスト・ヒッツ"的セレクションのなか、個人的には、隠れた名曲だと思っている「Dreaming Trees」（アルバム『Day Trip』収録）がプレイされたのにも感銘を受けました。なんとこれは、パットみずからエリックにアレンジを依頼したレパートリーなのだそうです。とてもロマンティックな、アコースティック・ギターとオーケストラの協奏曲を味わった気分になりました。

パットは"30周年を迎えたブルーノート東京に戻ってくることができて嬉しい"と語り、さらに"このオーケストラと再び演奏できるのは素晴らしい経験だ。エリックは心から私の音楽を愛し、素晴らしいアレンジをしてくれる"と続けました。剛柔を併せ持つオールスター・ジャズ・オーケストラですが、この日は特にフリューゲルホーン、フルート、クラリネットなどを駆使したマイルドなアンサンブルが活用されていたように思います。また繊細なシンバル・ワークでオーケストラ・サウンドを引き立てた高橋信之介のドラムスも大いに特筆すべきものでした。

この日のパフォーマンスも1月5日のwithマーカス・ミラー公演と同じく、電子楽譜専用端末「GVIDO」（グイド）を用いて行なわれました。エリックいわく"引っ越し用の段ボール25箱分の譜面が、これ1冊に収納できた"というすぐれもので、紙ではないので"譜めくり"の必要もありません。今後いろんなオーケストラやアンサンブルで活用されていくことでしょう。

オーケストラとのコラボは残すところ本日のみですが、パットの「ブルーノート東京」出演はまだまだ続きます。11日から14日にかけてはリンダ・メイ・ハン・オウ、グウィリム・シムコックとの「A NIGHT OF DUOS & TRIOS」、16日から20日にかけてはジェイムズ・フランシーズ、ネイト・スミスとの「SIDE EYE」によるパフォーマンスを披露。時代を切り拓き続けてきたカリスマ・ギタリストが、次世代ミュージシャンと繰り広げる新境地に限りなく期待が高まります。
(原田 2019 1.8）
Photo by Yuka Yamaji

●PAT METHENY "A NIGHT OF DUOS & TRIOS"
with LINDA MAY HAN OH & GWILYM SIMCOCK
1.11 fri., 1.12 sat., 1.13 sun., 1.14 mon.

●PAT METHENY "SIDE EYE"
with JAMES FRANCIES & NATE SMITH
1.16 wed., 1.17 thu., 1.18 fri., 1.19 sat., 1.20 sun.