2019 2.16 sat., 2.17 sun., 2.18 mon.
JUNKO ONISHI presents JATROIT featuring ROBERT HURST & KARRIEM RIGGINS
artist 大西順子
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
セクステット(6人)編成による意欲作『XII』をリリースしたばかりのピアニスト、大西順子が米国デトロイト出身の凄腕たちと目の覚めるようなプレイを繰り広げています。題して「大西順子 presents JATROIT featuring ロバート・ハースト & カリーム・リギンス」。ロバート・ハーストは'80年代にウィントン・マルサリスのバンドで頭角を現したベーシストで、ロバート・グラスパーやクリス・デイヴを迎えたリーダー作『Unrehurst, Vol. 2』は今世紀アコースティック・ジャズ史上に輝く傑作といえましょう。カリーム・リギンスはキャリアの最初期、大西のジャズ・ファンク作品『Fragile』('98年)にも参加しています。オスカー・ピーターソン、ダイアナ・クラール、ポール・マッカートニー、J・ディラ等と共演してきた、マルチディレクショナルな才人です。
どこかミニマル風なカリームの自作「Harpsichord Session」が短く奏され、激しくスウィングする「#3」へと続きます。作曲者のローレンス・ウィリアムスはトランペット奏者のマーカス・ベルグレイヴらと共にデトロイトのジャズ・シーンの指導者的位置にいた伝説的ドラム奏者で、ぼくはやはりデトロイト出身のドラム奏者ジェラルド・クリーヴァーからローレンスの名をきいたことがありますが、まさかこの日、彼の楽曲が聴けるとは。驚きと喜びに包まれました。カリームはしなやかなシンバル・レガートを披露するだけではなく、ソロ部分ではスネアの上に左手スティックを斜めに立ててそれを右手スティックで打つというフィリー・ジョー・ジョーンズ風の技も織り込んで快演。ロバートの重厚で堅実なベース、鍵盤を舞うように指を走らせる大西のピアノが一体となって興奮を運びます。まだタイトルがついていないという大西のオリジナル(仮に"9番"と名付けられていました)は、シンコペーションに富んだテーマ・メロディが印象的なブルース・コードの楽曲。うねるようなベース・ソロのあと、ピアノとドラムスが12小節ずつのソロ交換を繰り広げ、それはやがて4小節交換へと移り変わります。モダン・ジャズのど真ん中を行くプレイに、久しぶりにライヴで接した気がします。
オーラスはブルージーなピアノ・フレーズから始まりました。やがてベースとドラムスがスッと入り込み、カリームが1拍目に強いアクセントを置いたファンキーなリズムを打ち出します。これは何の曲だろう? と思っていたら、少しずつそれがホレス・パーラン作「Us Three」であることがわかってきました。この曲は大西の十八番で、ぼくも何度もライヴで聴いていますし、『パンドラ』というCDにも収められていますが、それらは基本的にパーランのヴァージョンを踏襲したアレンジでした。しかしこの日の「Us Three」は一味も二味も異なる装い。カリームはブラッシュではなくスティックに徹し、大西のピアノが放つ楽想の拡がりは際限なく、ドラマティックなエンディングも含めてスリルの連続でした。
「ああ、これが絶好調というものか」と痛感しながら、ぼくは帰路につきました。乗りに乗る3人の公演は明日まで続きます。
(原田 2019 2.17)
Photo by Tsuneo Koga
2019 2.16 SAT.
1st | |
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1. | HARPSICHORD SESSION |
2. | MEDITATION FOR A PAIR OF WIRE CUTTERS |
3. | GL/JM |
4. | THE THREEPENNY OPERA |
5. | GOLDEN BOYS |
6. | HARPSICHORD SESSION |
EC. | US THREE |
2nd | |
1. | HARPSICHORD SESSION |
2. | #3 |
3. | MORNING HAZE |
4. | #9 |
5. | VERY SPECIAL |
6. | EULOGIA ~ I WONDER |
EC. | US THREE |