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CHICK COREA TRILOGY featuring CHRISTIAN McBRIDE and BRIAN BLADE

artist BRIAN BLADE , CHICK COREA , CHRISTIAN McBRIDE

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


チック・コリア、クリスチャン・マクブライド、ブライアン・ブレイドの超強力トリオが、最新作『トリロジー2』を携えて、なんと約9年ぶりにブルーノート東京に登場しています。

ぼくはこのトリオについてチックに2度取材したことがありますが、いずれのときにも力を込めて説明してくれたのが"エヴリシング・イズ・ニュー"であるということ。「オリジナル曲はもちろん、スタンダード・ナンバーを題材にしても、この3人であれば毎回毎回、新鮮そのもののスリルを届けることができる。とにかくすべてが新しい」と語る彼の表情は嬉しさと誇りに満ち溢れていました。そしてこのトリオには、たとえばチック・コリア・エレクトリック・バンドのようなセット・リストがありません。チックの弾く無伴奏の導入部を聴きながら、クリスチャンとブライアンがこれから何の曲に取り組んでいくのか察して"音の会話"を始めていくか、もしくはステージの上でチックが曲名を言って即座に3者一体のパフォーマンスにもつれこむか。とにかくスポンテイニアス(自然発生的)であることを重視するトリオなのです。

オープニングはチックの大の愛奏曲である「How Deep Is The Ocean?」。『トリロジー』、『トリロジー2』、もっと以前にはチック・コリア・アコースティック・バンドの『Alive!』(学生時代のロバート・グラスパーがジャズに開眼した一枚でもあります)にも収められているアーヴィング・バーリン作のスタンダード・ナンバーですが、この日のピアノの導入部はやけに抽象的かつロマンティックです。そして、ベースやドラムスが演奏に合流しても、チックは原曲のメロディを全開せず、即興の間にパラパラとふりかけるようにしてパフォーマンスを進めていきます。"シンバルからこんなに柔らかな響きが出せるのか"と驚嘆せずにはいられないブライアンのプレイも圧巻でした。

クラシックとジャズの双方を愛するチックのセンスが炸裂したのは、ドメニコ・スカルラッティ(17世紀から18世紀にかけて活躍したイタリアの作曲家)のピアノ・ソナタと、バド・パウエル作「Tempus Fugit」のメドレーでした。前者でのチックは内部奏法(ピアノの弦をひっかく)も用いつつピアノを激しく鳴らし、ブライアンはベル(鈴)で繊細にアクセントをつけていきます。やがてパフォーマンスは後者へと移り変わり、サンバと4ビートを混ぜたようなリズムの中、トリオは猛烈なスウィングを始めます。

このセットではまた、クリスチャンの独壇場というべき「Sophisticated Lady」(デューク・エリントン作)も披露されました。前半部分では指弾きによる粒立ちの良いトーンをたっぷり聴かせ、ピアノのアドリブを挟んだあとの後半では弓弾きの妙技を披露します。「チックの自作は演奏されずに終わるのかな」と思っていたら、ラストで飛び出したのは初期(1960年代)の代表的オリジナル曲「Martix」。途中、エリントンがジョン・コルトレーンのために書いた「Take the Coltrane」のメロディをチックが引用すると、すかさずクリスチャンがユニゾンで合わせていくあたり、まさに阿吽の呼吸といっていいでしょう。

公演は8日まで休みなく行なわれますが、毎回毎回異なる興奮が味わえることが間違いありません。3人とも無尽蔵のレパートリーを持っているだけに、何が飛び出すか予測不可能です。"最高峰のトリオ・ジャズ"を、どうぞ至近距離でごらんください!
(原田 2019 4.5)
Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2019 4.4 WED.
  
1st
1. HOW DEEP IS THE OCEAN
2. ALICE IN WONDERLAND
3. PASTIME PARADISE
4. SCARLATTI SONATA
5. TEMPUS FUGIT
6. SOPHISTICATED LADY
7. CREPUSCULE WITH NELLIE
8. CHASIN’THE TRANE
 
2nd
1. 500 MILES HIGH
2. A SPANISH SONG
3. ONCE UPON A SUMMERTIME
4. JITTERBUG WALTZ
5. WORK
6. LYRIC SUITE
7. FINGERPRINTS
EC. BLUE MONK

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