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The EXP Series #25 HUNTERTONES

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

Facebook上で公開されている「Michael Jackson Mashup」(ホーン・セクションの3人をフィーチャーし、「Man in the Mirror」「I Want You Back」などマイケルの人気曲16トラックを演奏)が50数万viewを獲得。ジョン・バティステやリオーネル・ルエケも賞賛する話題のグループ、ハンタートーンズが待望の初来日を果たしました。公演初日となった4月17日は、彼らの日本デビュー作『パスポート』のリリース日。まさに絶好のタイミングでの日本公演です。ちなみに『パスポート』のプロデュースは"バンダ・マグダ"のマグダ・ヤニクゥ、ミキシングはスナーキー・パピーやボカンテの音作りにも携わっているニック・ハードが務めています。

初めて彼らのライヴを体験するオーディエンスに可能な限りたくさんのレパートリーを届けたいということでしょうか、セットリストは多種多彩の一言に尽きました。ファンキーでキャッチ―だけど、ワン・コードで延々とビートが反復することもロング・ソロが連続することもほとんどない、丹念にアレンジされたオリジナル曲。清新なハーモニー、趣向をこらしたリズム・パターンで迫るカヴァー曲。それらを彼らは見事に暗譜し、体を楽しそうに揺らしながら笑顔でプレイします。とくにトランペットとスーザフォンを兼任するジョン・ランプリーの存在感は抜群です。フレーズの途中で掛け声をあげながら高らかにトランペットを吹き(図太いハイノートも鳥肌モノでした)、スーザフォンを体に巻き付けては重低音ですさまじく歯切れのよい16分音符を吹くのです。いったい彼はひとりで何オクターヴを担っていたのでしょう。ブラス楽器を吹いているアマチュア・ミュージシャンがランプリーのプレイに接したら、なにか啓示のような受けた気分になるのではないでしょうか。

もちろんトロンボーンのクリス・オットも、ストレートに吹いたときのトーンの美しさ、ミュートをつけながら声も混ぜて音を出すユニークなアプローチの双方で異彩を放ち、「Sir Duke」や「I Wish」などを盛り込んだスティーヴィー・ワンダー・マッシュアップでは驚愕のビートボックスも披露。そしてMCも担当したテナー・サックス奏者ダン・ホワイト(ハンタートーンズの前身"ダン・ホワイト・セクステット"のリーダー)もバリバリ吹きまくるかと思えば、極端なサブトーン(楽器の音よりも息漏れの音やサックスのキーを触る音を前面に出す)を用いたアプローチも行なって、さすがの巧者ぶりです。キーボードを省いたリズム・セクションも"うねりのかたまり"といってよく、とくにギターのジョシュ・ヒルはリードとサイドをひとりでこなしながら管楽器とベースとドラムを結びつけます。そのキメ細かな指使いに、ぼくはSOLEIL(ソレイユ。キーボードレスのマージ―ビート系バンド)のギタリスト、中森泰弘を思い出しました。

ラストは"ジャズの父"ルイ・アームストロングの人気曲「What a Wonderful World」。ルイはトランペッターとヴォーカルの双方で不滅の名声を獲得したひとりですが、この曲の公式レコーディング(2ヴァージョン存在します)では演奏せず歌に専念していました。しかしハンタートーンズはインスト・バンドなので、ランプリーのトランペットを前面に押し出したアレンジでプレイします。彼はまずイントロにルイが若き日に書いたオリジナル曲「Struttin' with Some Barbecue」(かわいい女の子を見せびらかすように連れ歩く、というスラングだそうです)のメロディを導入、"ルイがもしこの曲でトランペットを吹いていたら"的、豊かなトーンとビブラートで、旋律を奏であげました。

ブルーノート東京が次世代ミュージシャンをプレゼンテーションする「The EXPシリーズ」をぼくはヨダレが出るほど好きなのですが、今回は格別すぎます。東京スカパラダイスオーケストラ、ザ・ソウル・レベルズ、ブラック・ボトム・ブラス・バンド、世代交代が済んでからのプリザベーション・ホール・ジャズ・バンド等、"管楽器が大活躍して、しかもリズムが強くて、踊れてかっこいいバンド"がお好きの方には最高のひとときを提供してくれることでしょう。公演は本日まで!!

(原田 2019 4.18)

Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2019 4.17 WED.
1st
1. CLUTCH
2. DISCO TENT
3. TRIO (STEVIE WONDER COVER)
4. GOD ONLY KNOWS
5. CHANGE
6. STAR OF THE EAST
7. BURNS
8. SWEATIN
EC. WHAT A WONDERFUL WORLD
 
2nd
1. FARA
2. CAMPTOWN RACES
3. TRIO (QUEEN COVER)
4. BAD DAVID
5. WINDJAMMER
6. COLORS
7. BIRD SONG
8. PARUSHA
9. TOGO
EC. LOOKING BACK

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