2019 4.17 wed., 4.18 thu.
The EXP Series #25 HUNTERTONES
artist HUNTERTONES
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
Facebook上で公開されている「Michael Jackson Mashup」(ホーン・セクションの3人をフィーチャーし、「Man in the Mirror」「I Want You Back」などマイケルの人気曲16トラックを演奏)が50数万viewを獲得。ジョン・バティステやリオーネル・ルエケも賞賛する話題のグループ、ハンタートーンズが待望の初来日を果たしました。公演初日となった4月17日は、彼らの日本デビュー作『パスポート』のリリース日。まさに絶好のタイミングでの日本公演です。ちなみに『パスポート』のプロデュースは"バンダ・マグダ"のマグダ・ヤニクゥ、ミキシングはスナーキー・パピーやボカンテの音作りにも携わっているニック・ハードが務めています。
初めて彼らのライヴを体験するオーディエンスに可能な限りたくさんのレパートリーを届けたいということでしょうか、セットリストは多種多彩の一言に尽きました。ファンキーでキャッチ―だけど、ワン・コードで延々とビートが反復することもロング・ソロが連続することもほとんどない、丹念にアレンジされたオリジナル曲。清新なハーモニー、趣向をこらしたリズム・パターンで迫るカヴァー曲。それらを彼らは見事に暗譜し、体を楽しそうに揺らしながら笑顔でプレイします。とくにトランペットとスーザフォンを兼任するジョン・ランプリーの存在感は抜群です。フレーズの途中で掛け声をあげながら高らかにトランペットを吹き(図太いハイノートも鳥肌モノでした)、スーザフォンを体に巻き付けては重低音ですさまじく歯切れのよい16分音符を吹くのです。いったい彼はひとりで何オクターヴを担っていたのでしょう。ブラス楽器を吹いているアマチュア・ミュージシャンがランプリーのプレイに接したら、なにか啓示のような受けた気分になるのではないでしょうか。
もちろんトロンボーンのクリス・オットも、ストレートに吹いたときのトーンの美しさ、ミュートをつけながら声も混ぜて音を出すユニークなアプローチの双方で異彩を放ち、「Sir Duke」や「I Wish」などを盛り込んだスティーヴィー・ワンダー・マッシュアップでは驚愕のビートボックスも披露。そしてMCも担当したテナー・サックス奏者ダン・ホワイト(ハンタートーンズの前身"ダン・ホワイト・セクステット"のリーダー)もバリバリ吹きまくるかと思えば、極端なサブトーン(楽器の音よりも息漏れの音やサックスのキーを触る音を前面に出す)を用いたアプローチも行なって、さすがの巧者ぶりです。キーボードを省いたリズム・セクションも"うねりのかたまり"といってよく、とくにギターのジョシュ・ヒルはリードとサイドをひとりでこなしながら管楽器とベースとドラムを結びつけます。そのキメ細かな指使いに、ぼくはSOLEIL(ソレイユ。キーボードレスのマージ―ビート系バンド)のギタリスト、中森泰弘を思い出しました。
ラストは"ジャズの父"ルイ・アームストロングの人気曲「What a Wonderful World」。ルイはトランペッターとヴォーカルの双方で不滅の名声を獲得したひとりですが、この曲の公式レコーディング(2ヴァージョン存在します)では演奏せず歌に専念していました。しかしハンタートーンズはインスト・バンドなので、ランプリーのトランペットを前面に押し出したアレンジでプレイします。彼はまずイントロにルイが若き日に書いたオリジナル曲「Struttin' with Some Barbecue」(かわいい女の子を見せびらかすように連れ歩く、というスラングだそうです)のメロディを導入、"ルイがもしこの曲でトランペットを吹いていたら"的、豊かなトーンとビブラートで、旋律を奏であげました。
ブルーノート東京が次世代ミュージシャンをプレゼンテーションする「The EXPシリーズ」をぼくはヨダレが出るほど好きなのですが、今回は格別すぎます。東京スカパラダイスオーケストラ、ザ・ソウル・レベルズ、ブラック・ボトム・ブラス・バンド、世代交代が済んでからのプリザベーション・ホール・ジャズ・バンド等、"管楽器が大活躍して、しかもリズムが強くて、踊れてかっこいいバンド"がお好きの方には最高のひとときを提供してくれることでしょう。公演は本日まで!!
(原田 2019 4.18)
Photo by Tsuneo Koga
2019 4.17 WED.
1st | |
---|---|
1. | CLUTCH |
2. | DISCO TENT |
3. | TRIO (STEVIE WONDER COVER) |
4. | GOD ONLY KNOWS |
5. | CHANGE |
6. | STAR OF THE EAST |
7. | BURNS |
8. | SWEATIN |
EC. | WHAT A WONDERFUL WORLD |
2nd | |
1. | FARA |
2. | CAMPTOWN RACES |
3. | TRIO (QUEEN COVER) |
4. | BAD DAVID |
5. | WINDJAMMER |
6. | COLORS |
7. | BIRD SONG |
8. | PARUSHA | 9. | TOGO |
EC. | LOOKING BACK |