2019 4.21 sun., 4.22 mon.
The EXP Series #27 CHRISTIAN SANDS
artist CHRISTIAN SANDS
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
クリスチャン・マクブライドのバンド等で輝きを放つピアニスト、クリスチャン・サンズ(1989年コネチカット州生まれ)が遂に自身のユニットで来日しました。伝説的ピアニストであるビリー・テイラー(アート・テイタムに師事したひとりで、チャーリー・パーカーやビリー・ホリデイと共演。ソングライターとしては、ニーナ・シモンやソロモン・バークが歌ったメッセージ・ソング「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」が有名)に教えを受け、13歳のときに自主制作で初アルバムを発表。ラテンの名匠ボビー・サナブリア等のバンドを経て、2017年からは年1枚の割合で注目のレーベル"マック・アヴェニュー"からリーダー・アルバムを出しています。最新作『Facing Dragons』にはマーカス・ストリックランドやキーヨン・ハロルドも参加、よりコンテンポラリーな音作りに才能を発揮しています。
来日公演はジョシュ・アレン(ベース)、ジョン・デイヴィス(ドラムス)とのトリオ編成。オープニングは『Facing Dragons』でも1曲目に入っている「Rebel Music」でした。CDではフェンダー・ローズの妙技を聴かせてくれましたが、この日はもちろんアコースティック・ピアノによるパフォーマンス。アレンもデイヴィスもステディなビートを刻むというよりも、他の2者の音に常に耳を傾け、積極的に絡んでいくタイプです。そしてサンズは、アレンジャーとしてもたっぷり異能を発揮してくれました。1930年代から数えきれないほどのミュージシャンに取り上げられてきた大スタンダード・ナンバー「Body and Soul」には斬新なリハモナイズが施され、なんというかブラック・コンテンポラリー風に。アドリブ部分は原曲のコード進行ではなく、サンズが新たに考案したと思しきパターンに乗ってプレイされます(ぼくはロバート・グラスパーの「Stella By Starlight」における解釈を思い出しました)。
さらに驚きの聴きものだったのが「Moanin'」です。ドラマーのアート・ブレイキーが率いる"ジャズ・メッセンジャーズ"の演奏で広まったナンバーで、作曲は同バンドのピアニストであったボビー・ティモンズ(1958年)。ジャズ・メッセンジャーズの演奏は、まずピアノと他の楽器のコール&レスポンスでテーマ・メロディが奏でられ、やがてアドリブ・パートに突入。ブレイキーの豪快なスティック・ワークに煽られるようにして力強いソロが続くというものでした。しかしクリスチャン・サンズ・トリオの解釈はベースの無伴奏ソロから始まるという、意表をついた展開。そのままベースがテーマ・メロディを奏で(コール&レスポンスは登場しない)、アドリブに入ります。デイヴィスはブラッシュで淡々と抑え気味のサポートを繰り広げ、スティックに持ち替えてからもトップ・シンバルを一定のタイミングで叩くというよりは、数々のタムを駆使したメロディアスなドラミングでソリストに絡みます。ファンキーに盛り上がるとか、シンプルにスウィングすることを注意深く避けつつ、3人が3人とも"いままで、いろんなひとがとりあげてきた「Moanin'」の逆"を行くようなアプローチをとっているように聴こえました。サンズは驚異的な速弾きでオクターヴ奏法を披露するかと思えば、間を生かした打楽器的なアプローチも盛り込んで、やがて抽象的なフレーズを連発。突如スティーヴィー・ワンダーの「Living For The City」の間奏に出てくるリフを弾くと、アレンがそれにあわせ、結局そのリフを何度か繰り返したまま、彼らの「Moanin'」は終わりました。
あっと驚く名曲アレンジと、清新なオリジナルを引っさげて、クリスチャン・サンズ・トリオは本日も現代アコースティック・ジャズの面白さを伝えてくれることでしょう。
(原田 2019 4.22)
Photo by Yuka Yamaji
2019 4.21 SUN.
1st | |
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1. | REBEL MUSIC |
2. | BOLIVIA |
3. | REACH FOR THE SUN |
4. | MOANIN' |
5. | BODY & SOUL |
6. | BLUE MONK |
2nd | |
1. | HUMPTY DUMPTY |
2. | ROAD LIFE |
3. | REACH FOR THE SUN |
4. | MOANIN' |
5. | IN A SENTIMENTAL MOOD |
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