2019 6.8 sat., 6.9 sun., 6.10 mon.
BILL FRISELL TRIO
artist BILL FRISELL
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
ギター・ファンにとって本当に楽しい時期が訪れています。「ブルーノート東京」には先日までトミー・エマニュエルやジョン・スコフィールドが出演し、「コットンクラブ」ではただいまギラッド・ヘクセルマンが公演中。先月中旬はヤコブ・ブロが演奏していましたし、ウルフ・ワケーニウス、シコ・ピニェイロ、マイク・モレノの登場予定もあります。こんなに多種多彩なギタリストのそれぞれ単独公演を、至近距離で見ることができる機会は世界的にもレアなのではないでしょうか。そして今、「ブルーノート東京」では名匠ビル・フリゼールがトーマス・モーガン(ベース)、ルディ・ロイストン(ドラムス)とのトリオで快演しています。トーマスとのデュオ・ライヴ・アルバム『Epistrophy』がECMレーベルから発売されて間もないなか、まさに絶好のタイミングでの来日です。
セットリストはなく、ステージの進行はすべてビルのその場のイマジネーションに委ねられている印象を受けました。曲間のMCは一切なく、各レパートリーがシームレスでつながり、ひとつの壮大な組曲を体験しているような気分へといざないます。冒頭、ビルがゆったりとしたコード(和音)・プレイを始めると、すかさずトーマスが高音部を多用したフレーズで絡み、ルディはマレットを用いてアンサンブルに彩りを加えます。やがて、"色立体視"のように全体のサウンドから浮かび上がってきたのは「Moon River」。映画『ティファニーで朝食を』で、主演のオードリー・ヘプバーンが歌った歴史的名曲です。ビルはニュアンスを変えながら何度も何度もテーマ・メロディに取り組み、時折きらめくようなハーモニクスも挿入しつつ、まさに歌いあげるようにギターをプレイします。かと思えばループを用いたアグレッシヴなパートに突入して、そこからポール・モチアン(ビルは長く彼のバンドに在籍していました)作「Mumbo Jumbo」へつなげたり。ジャズ史上の鬼才ピアニスト/作曲家セロニアス・モンクのナンバーからも、「Misterioso」と「Epistrophy」が取り上げられました。「Misterioso」では、ここぞとばかりに4ビートでスウィングするルディのサポートを受けて綴られる、まさしく"ビル流のブルース解釈"としかいいようもない即興を満喫できました。
エッジの立った堅めの音色('90年代初頭のレコーディングに顕著な、アタックを消したプレイと比較試聴していただけるといっそう面白いのではないかと思います)、会場全体の空気を覆うかのようなサステイン、他の追随を許さない刺激的な単音と和音のブレンド比率・・・ギターの面白さ、奥深さを存分に浴びました。公演は10日まで続きますが、なにしろ無限のレパートリーを持っているビル・フリゼールです。今夜は、どんな楽曲で魅了してくれるのでしょうか。
(原田 2019 6.9)
Photo by Takuo Sato
2019 6.8 SAT.
1st | |
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1. | MOON RIVER |
2. | MUMBO JUMBO |
3. | MISTERIOSO |
4. | IT SHOULD HAVE HAPPENED A LONG TIME AGO |
5. | PEARL |
6. | MY MANS GONE NOW |
7. | STRANGE MEETING |
8. | EPISTROPHY |
9. | WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE |
2nd | |
1. | BABY CRY |
2. | LEVEES |
3. | RAMBLER |
4. | YOU ONLY LIVE TWICE |
5. | LUSH LIFE |
6. | FOLLOW YOUR HEART |
7. | IN A SILENT WAY |
8. | SMALLTOWN |
9. | BABA DRAME |
10. | WE SHALL OVERCOME |
11. | GOLDFINGER |
12. | WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE |