2019 9.9 mon., 9.10 tue.
CAMILA MEZA & THE NECTAR ORCHESTRA
artist CAMILA MEZA
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
熱い胸騒ぎをたぎらせながら会場に急ぎました。というのも、個人的にブルーノート東京で最も聴きたかったアーティストのひとりがカミラ・メサだったからです。シャイ・マエストロとのコンビ等で何度か来日したことがありますが(2017年には東京JAZZにも登場)、今回はバンド"ザ・ネクター・オーケストラ"を率いての日本初公演です。妖艶で、凛々しく、時にやるせないほどの声+鍵盤+打楽器+弦楽器のブレンドには、ただただ酔わされるばかり。ニュアンスに富んだPAや照明も素晴らしく、スタッフの誰も彼もがカミラの音楽にリスペクトを捧げ、この公演を最高のものにしようと一丸となっている・・・そんな印象を受けました。
柔らかさと力強さを兼ね備えた歌声はもちろん、ギター・プレイも鮮烈の一言に尽きます。彼女はもともとギタリストとして活動を始め、のちに歌を歌うようになったとのことですが、弾き語りにありがちな"歌に寄り添うギター"という感じではなく、歌とギターが、ものすごいかっこよさを伴って別個に主張してくるのです。こんなに両者が拮抗している音楽家は、ぼくの知る限りジョージ・ベンソンぐらいしかいません。カミラはほとんどの曲で、2コーラスほど歌ったあと、他のミュージシャンにソロ・パートを委ね、ラスト・コーラスに向かってギターでこれでもかと即興を繰り広げます。アドリブにおけるインスピレーションは、もう底なしといった感じです。どの箇所も、クライマックスばかりといっていいでしょう。
そんなカミラを鼓舞するメンバーたちもまた見事でした。イスラエル→ニューヨーク・コネクションの重要人物エデン・ラディンはフェンダー・ローズやアコースティック・ピアノで鬼才ぶりを発揮し、やはりイスラエル出身のベース奏者ノーム・ウィーゼンバーグ(『Roads Diverge』も快作でした)はピチカート、アルコ(絶品!)でバンドの錨役を務めると共に、ものすごくリッチな内声を持ったストリングス・アレンジを提供します。ドラムとパーカッションを自在に操る小川慶太は、まるでリズムの化身のよう。ストリングス・セクションも豊穣な響きを生み出していました。
演目は最新傑作『Ámbar (琥珀)』からのものが中心で、そこに入っていたミルトン・ナシメント作「MILAGRE DOS PEIXES」や、年季の入ったファンにはアイ・ジョージの歌唱がおなじみであろう古典的ナンバー「CUCURRUCUCU PALOMA」も披露されました。それにしても定評のある古典的チューンが、あんな新鮮な衣をまとって我々の前に差し出されようとは。まさしくカミラをはじめとするバンド・メンバーたちは、とれたての音楽を提供する名シェフたちなのだな、と痛感させられました。
胸のすくようなステージでした。セシル・マクロリン・サルヴァントやジャズメイア・ホーンがいて、アミルサ・キダンビがいて、カミラ・メサがいる。現在のジャズ系ヴォーカル・シーンは、なんて風通しがいいんでしょう。そして無敵なんでしょう。個人的には今年のベストに入ること間違いなしのライヴでしたが、賛同してくださる方は相当いらっしゃるのではと思います。公演は本日まで!
(原田 2019 9.10)
Photo by Takuo Sato
2019 9.9 MON.
1st | |
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1. | WALTZ |
2. | MILAGRE DOS PEIXES |
3. | OLHA MARIA |
4. | AWAKEN |
5. | CUCURRUCUCU PALOMA |
6. | INTERLUDE〜AMBAR |
7. | PARA VOLAR |
EC. | KALLFU |
2nd | |
1. | AMAZON FAREWELL |
2. | ALL YOUR COLORS |
3. | ATARDECER |
4. | OLHA MARIA |
5. | FALL |
6. | TRACES |
7. | THIS IS NOT AMERICA |
8. | LUCHIN |
9. | KALLFU |
EC. | AWAKEN |