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RYMDEN featuring BUGGE WESSELTOFT, DAN BERGLUND & MAGNUS ÖSTRÖM

artist BUGGE WESSELTOFT , RYMDEN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


"リムデン"(宇宙空間)というユニット名通りの雄大で神秘的、そして限りなく想像力に訴えるサウンドが広がります。ノルウェーのブッゲ・ヴェッセルトフト、そしてスウェーデンのダン・ベルグルンドとマグヌス・オストロム。鬼才3人が2017年に結成したコンビネーションがついに日本初登場です。

ブッゲはアコースティック・ピアノ、シンセサイザー、フェンダー・ローズに囲まれ、ダンはエフェクターも駆使しながら指弾きと弓弾きで大きな存在感を発揮します。細やかな指使いによるビブラートを伴って放たれるロング・トーンは絶品です。マグヌスのドラムスは"静寂から暴風雨まで"という感じで、尋常ではないほどのメリハリをつけたアプローチで迫ります。スクリーンに次々と映し出される抽象的な映像、幻想的なライティング、演奏の局面に応じてリヴァーブや生音/電子的な加工音が見事に切り替わるPAも見事でした。すべてのスタッフが、リムデンの音楽に貢献しているのです。

最新アルバム『Reflections & Odysseys』からは、何かにとりつかれたようにブッゲがアグレッシヴにフェンダー・ローズ・プレイを弾きまくる「Pitter-Patter」、3人の抒情的な一面を満喫できるフォーク・タッチの「Homegrown」、冷ややかなマーチング・リズムに乗ってピアノとベースがからみつく「The Celestial Dog And The Funeral Ship」などが演奏されました。途中、何度かマグヌスによるMCが入りましたが、ほとんどの曲は連続して演奏され、プレイはアルバムよりもさらに発展・飛躍し、もはや『Reflections & Odysseys』を基にした壮大な変奏曲といった印象を受けました。生ピアノにおける内部奏法の音色を電気的に加工し、かと思えば立ち上がって生ピアノとフェンダー・ローズを同時にプレイし、それでも足りないとばかりにシンセサイザーから超重低音を放つブッゲ。生音からディストーションをかけた音まで自由自在に使い分けてサポートにソロにと動き回るダン、いっぽうマグヌスは右手にマラカス、左手にスティックを持って圧巻のファンク・ビートを刻みます。そしてスクリーンに映し出された赤い色がどんどん鮮烈さを増していき、気が付くとぼくは"異次元に吸い込まれていくときは、こんな気分になるのでは?"という境地を疑似体験していました。

'90年代から"ニュー・コンセプション・オブ・ジャズ"を提唱するブッゲ、そして2000年代前半にピアノ・トリオの新時代を拓いた"E.S.T."(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ。スヴェンソンは2008年に他界)のリズム・セクションであるダンとマグヌスが年齢を重ねて合流し、さらに次の扉を開こうとしている姿に胸が熱くなるベテラン・ファンは、自分だけではないと思います。そして、ゴーゴー・ペンギン、コリン・ヴァロン・トリオ、新生ザ・バッド・プラス(ピアニストがオリン・エヴァンスに替わりました)、フォックス・キャプチャー・プラン等からピアノ+ベース+トリオ・ミュージックの奥深さにはまっているファンにも、彼らのメランコリックでエクスペリメンタルな音楽世界をぜひ体験いただけたら幸いです。公演は本日まで行なわれます。クロークではもちろん、『Reflections & Odysseys』も販売中。ご自宅でもぜひ、リムデンの表現をお楽しみください。
(原田 2019 10.8)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2019 10.7 TUE.
  
1st & 2nd
1. REFLECTIONS
2. THE ODYSSEY
3. PITTER-PATTER
4. THE LUGUBRIOUS YOUTH OF LUCKY LUKE
5. THE PEACEMAKER
6. ZETTE
7. RÅK-THE ABYSS
8. THE CELESTIAL DOG AND THE FUNERAL SHIP
9. BERGEN
EC. HOMEGROWN

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