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HARVEY MASON "CHAMELEON" featuring MARK de CLIVE-LOWE, HAILEY NISWANGER, OMAR DOMINICK & ERIC DAWKINS

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

人気ドラマー、ハーヴィー・メイソン率いる"カメレオン・バンド"が待望の再来日を果たしています。数々の魅力をそなえている同バンドですが、あえて3つだけそれを挙げさせていただくと、個人的には次のようになります。

1) 常に才能あふれる気鋭ミュージシャンをメンバーに加えていること:2014年の公演にカマシ・ワシントン、2016年にマイルズ・モズリー、2017年にモノネオンが参加していたことは語り草でしょう。今回はヘイリー・ニスワンガー(サックス、フルート。エスペランサ・スポルディングらと共演)、オマール・ドミニク(ベース。K-POPグループ"BIG BANG"のツアーにも参加)という超有望な凄腕が参加。ヴォーカルのエリック・ドーキンズはヒット映画『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男』のサウンドトラックにも参加していた、深い声を持つ歌い手です。そしてキーボードは今回も名匠マーク・ド・クライヴ・ロウが担当します。

2) 70年代のジャズ・ファンク定番が、新たなアレンジで蘇っていること:百戦錬磨のキャリアを持つメイソンですが、なかでも初期の金字塔にあげられるのがハービー・ハンコック・バンド在籍中の演奏です。ぼくが観た初日ファースト・セットでは、「CANTALOUPE ISLAND」と「4AM」、さらに「CHAMELEON」といったハンコックの楽曲を、メイソン独自のアレンジで聴かせてくれました。とくにヘイリーのエフェクターをかけたフルートがフィーチャーされたクールな「CANTALOUPE~」には、ハンコックの自作自演はもちろん、数々のカヴァー・ヴァージョンともまったく異なる感触を覚えました。「CHAMELEON」も"Bセクション"(ハンコックのアルバム『ヘッド・ハンターズ』では7分40秒ごろから開始)を除いたアレンジが施され、シンプルなジャム・ナンバーとして生まれ変わりました。ここでは奔放なスキャットを繰り広げたエリックはまた、「GROOVIN' YOU」などメイソンのディスコ・ヒットの数々も逞しく歌いあげました。

3) フォープレイとは180度近く異なる、大胆不敵なドラム・プレイ:メイソンは'90年からボブ・ジェームス、ネイザン・イーストらとスムース・ジャズ系ユニット"フォープレイ"を続けています(2017年にギタリストのチャック・ローブが亡くなって以降、活動が滞っていますが)。このユニットで彼のドラム演奏を知ったファンも数多いことでしょう。クラシカルでエレガントなボブのハーモニー・センスに寄り添うような、優しくまろやかなプレイはまさしく名手の証ですが、"カメレオン・バンド"での彼は実にアグレッシヴです。フォープレイの人気曲「TALLY HO」も、このバンドにかかると猛烈な熱気を放ち、ヘイリーのエフェクターをかけたサクセロ(ソプラノ・サックスの一種)がうねりにうねります。メイソンのドラム・ソロの場面はいくつかありますが、なかでも手に汗を握ったのが、メイソンが叩きまくる音を、マークがコンピューターを使ってリアルタイムで"電化"、結果として摩訶不思議な音響の数々がPAスピーカーから放出されるのですから、圧巻です。

公演は18日まで行なわれます。メイソン、およびカメレオン・バンドの猛烈なグルーヴと熱情に心打たれること間違いなしのステージといっていいでしょう。

(原田 2019 10.17)

Photo by Takuo Sato

SET LIST

2019 10.16 WED.
1st
1. ALL OF YOU
2. TALLY HO
3. CANTALOUPE ISLAND
4. 4AM
5. I CAN'T HELP IT
6. LOVE
7. NO MAN'S LAND
8. CLASSIC MEDLEY
9. CHAMELEON
 
2nd
1. ALL OF YOU
2. TALLY HO
3. CANTALOUPE ISLAND
4. ACTUAL PROOF
5. I CAN'T HELP IT
6. LOVE
7. NO MAN'S LAND
8. CLASSIC MEDLEY
9. CHAMELEON
EC. 4AM

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