2019 10.31 thu., 11.1 fri.
The EXP Series #33 / NIA ANDREWS
artist NIA ANDREWS
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
'60~'70年代から活躍してきたジャズ~ファンク系ミュージシャンの子供たちが、第一線で才能をふりまいているのは本当に嬉しいものです。カマシ・ワシントン(父親は元ロー・ソウル・エクスプレスのサックス奏者リッキー・ワシントン)、2月「ブルーノート東京」に登場したジョージア・アン・マルドロウ(父親はギター奏者のロナルド・マルドロウ)の鮮烈なパフォーマンスにも目と耳をひきつけられっぱなしですが、ただいま公演中のニア・アンドリュースは、パトリース・ラッシェンやカマシのメンターでもあるキーボード奏者レジー・アンドリュースの愛娘。ささやき・語り掛けからシャウトまで尋常ではないほどメリハリのある歌声、寡黙と雄弁を兼ね備えた鍵盤さばきには引き込まれるばかり。自身のグループによる記念すべき初来日です。
ステージに登場したニアは、まず、いうなれば"コンセントレイション"をします。観客と一緒に、息を深く吸って、ゆっくり吐く。互いに笑顔で、同じ行為をおこなうことで、彼女はオーディエンスの存在をより身近に感じたいのでしょうか。特徴的なベース・ラインが鳴り響いたのは5月にシングル先行リリースされ、最新アルバム『No Place Is Safe』にも収められている「Linger」。ニアはアコースティック・ピアノを弾きながら歌うのですが、その間に何度も右手の手のひらを鍵盤に押し付けるようにしてずらし、猛烈なグリッサンド奏法を行なうのです。間奏や歌のブレスの合間ではなく、歌いながら同時にグリッサンドを行なうミュージシャンには、初めて出会った気がします。またその音色がなんともいえず乾き気味なので、個人的にはアリス・コルトレーンのハープ演奏を思い出さずにはいられませんでした。
共演者のうち、ブランドン・ユージン・オーエンスはケンドリック・ラマ―やマーク・ド・クライヴ・ロウ(先日ハーヴィー・メイソンのバンドで登場したばかり)のアルバムにも参加。エレクトリック・ベースを主に、アコースティック・ギターでも卓越したストロークを聴かせました。そして六本木で行なわれたブライアン・ジャクソンの公演から約1か月で日本に戻ってきたアラコイ・ピートは、独自のパーカッション・セットでサウンドを活気づけます。左手でスネア・ドラム(スティックは使いません)、右手でカホン。ときおりウィンドチャイムやボンゴが彩りを加えます。ニアはピアノ、キーボード、エレクトリック・ギターを使い分けながらの快演です。鮮血がほとばしるような赤色が後方スクリーンに拡がるなか、三者がどこまでも登りつめていくような激しいプレイを繰り広げた「Do Not Disturb」のようなナンバーもありましたが、ライヴは全体的に"静の力"というべきもの。ニュアンスに富んだメンバーの演唱、オーディエンスはそれを一音も漏らすまいとじっと聴き入ります。ニアは曲によって、見事な"リアルタイムひとりハーモニー"(どこかジェイコブ・コリアーに通じる)も披露。これも大きな聴きものといえましょう。公演は本日まで。才能の芽吹きを、ぜひ至近距離でご堪能ください。
(原田 2019 11.1)
Photo by Tsuneo Koga
2019 10.31 THU.
1st & 2nd | |
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1. | INTRO |
2. | LINGER |
3. | FROM HERE |
4. | DOWN |
5. | DO NOT DISTURB |
6. | COLOURS |
7. | MIGHT BE ETERNITY |
8. | OLD MAN |
9. | LITTLE GIRL |
10. | THE CEILING |
11. | SEEMS SO |
EC. | INSIDE YOUR HEAD |