2020 2.9 sun., 2.10 mon., 2.11 tue.
TORTOISE (1st:Performing "TNT" / 2nd:Greatest Hits)
artist TORTOISE
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
今年で発足30周年を迎えるポスト・ロック~エクスペリメンタルの重鎮ユニット、トータスが超満員のブルーノート東京を沸かせています。今回の公演は、ファースト・セットが1998年の名盤『TNT』に焦点を絞った内容、セカンド・セットがこれまでの代表曲を中心としたプログラム。サポートに英国出身のシンガー・ソングライター、ジェームス・エルキントン(もちろんここでは歌いませんが)を加えた6人編成で、どの日のどの回でも華麗でクールで肉感的なインストゥルメンタル音楽の世界をたっぷり届けてくれるであろうことは間違いのないところでしょう。
個人的にも『TNT』は忘れがたい一枚です。トータスの名前はそれ以前から知っていましたが(シカゴ音響派というくくりで紹介されていたと記憶します)、最初に買ったのはこのアルバムです。ジャケットのイラストがあまりにも素晴らしく、ぜひ手元に置いておきたかったからという理由なのですが、内容も耳を離せないほど趣向に富んでいて、当時自分が編集者を務めていたジャズ雑誌でもとりあげました。その"新譜"が歳月を経て名盤の評価を確立し、そして今、年輪を重ねたメンバーによる再生ライヴが目の前で行なわれているという事実は感動的でした。さらにうれしかったのは、『TNT』にリアルタイムで間に合わなかったであろう年代のオーディエンスもたくさんいたこと。"次世代"に聴き継がれること、これは本当に尊いです。
あまりにも素晴らしいジャケット・イラストがステージ背後のスクリーンに大きく映し出され、ジェフ・パーカーがシンプルなギター・フレーズを繰り返しつまびくと、場内が"ついに始まった!"とばかりに熱狂します。曲はオープニング・ナンバーの「TNT」。ジョン・ハーンドンとジョン・マッケンタイアが向かい合ってそれぞれのドラム・セットを叩き、厚みのあるサウンド、快いリズムを送り出します。ディスクでは各トラックの曲間がほとんどありませんでしたが、今回は奏者の楽器間移動もあるので(トータスは全員が複数の楽器を操ります)、ほぼ一曲ごとに演奏がしっかり終了し、観客の拍手を受けて次のナンバーが始まるという形でした。つぶさにステージを観察していれば、"あの曲のここは、この楽器をこんな風にして出していたのか"的な発見も得ることでしょう。エロチックなミニマル・ミュージックと形容したくなる「Ten-Day Interval」(ヴィブラフォン+マリンバのアンサンブルはもちろん、ダグ・マッコームズのメロディアスなベース・プレイも圧巻)、トータスなりのサンバというべき「Almost Always Is Nearly Enough」等を間近で体験できるのは快感のひとことにつきます。ディスクでシカゴ・アンダーグラウンドのロブ・マズレク等が担当していたサポート・ミューシャンのパートは今回、山田丈造(トランペット)、駒野逸美(トロンボーン)、波多野敦子(ヴァイオリン)、関口将史(チェロ)、河崎聡(バスーン)が担当。トータスのサウンドに柔らかな色彩を付け加えていました。
公演は11日まで開催されます。また、ジェフ・パーカーは7月に自身のプロジェクトでここに戻ってくるとのこと。こちらも見逃せません!
(原田 2020 2.10)
Photo by Takuo Sato
2020 2.9 SUN.
1st | |
---|---|
1. | TNT |
2. | SWUNG FROM THE GUTTERS |
3. | TEN-DAY INTERVAL |
4. | I SET MY FACE TO THE HILLSIDE |
5. | THE EQUATOR |
6. | A SIMPLE WAY TO GO FASTER THAN LIGHT THAT DOES NOT WORK |
7. | THE SUSPENSION BRIDGE AT IGUAZÚ FALLS |
8. | FOUR-DAY INTERVAL |
9. | IN SARAH, MENCKEN, CHRIST, AND BEETHOVEN THERE WERE WOMEN AND MAN |
10. | ALMOST ALWAYS IS NEARLY ENOUGH |
11. | JETTY |
12. | EVERGLADE |
2nd | |
1. | SENECA |
2. | TIN CANS & TWINE |
3. | PREPARE YOUR COFFIN |
4. | HOT COFFEE |
5. | HIGH CLASS SLIM CAME FLOATIN’ IN |
6. | YONDER BLUE |
7. | SALT THE SKIES |
8. | DOT/EYES |
9. | EROS |
10. | MONICA |
11. | CREST |
12. | ALONG THE BANKS OF RIVERS |
EC. | GLASS MUSEUM |