2020 2.20 thu., 2.21 fri., 2.22 sat., 2.23 sun., 2.24 mon.
CHRIS BOTTI
artist CHRIS BOTTI
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
バンドというよりも"一座"といったほうが、内容のバラエティが伝わるかもしれません。ジャンルやカテゴリーを超えて多くのリスナーに支持されるトランペット奏者、クリス・ボッティ恒例の5デイズ10セット公演が、昨日から満員のオーディエンスを集めて開催されています。
ステージは極めてメロウかつ静謐に、ボッティと初来日のヴァイオリン奏者アナスタシア・マズロクをフィーチャーした「Sevdah」から始まりました。エコーをたっぷりかけたトランペットの音色は、まるで森の向こうから響いてくるかのよう。つづけて間髪を入れずに「Someone to Watch Over Me」、そして十八番の「When I Fall in Love」へと続きます。「When~」をマイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスの演奏でご存じのジャズ・ファンも少なくないことでしょうが、ボッティのアドリブはコード進行に従わず、エンディングの部分を拡張して繰り返すヴァンプ(vamp)に沿って行なわれます。彼は幅広い音域を自在に操って吹きまくり(このあたり、なかなかスタジオ・レコーディングでは感じにくいところかもしれません)、途中でマイルスの演奏で有名な「Seven Steps to Heaven」のメロディも引用しました。また「Emmanuel」のラストでは、まるでチューバのような低音によるロング・トーンで耳を引きつけました。
前回の公演でも圧倒的なオルガン・プレイを聴かせたジョーイ・デフランセスコは、プログラム中盤の「You Don't Know What Love Is」から参加します。数十枚のリーダー・アルバムを発表している現代のボス・オルガン的存在の彼が、なにげない顔でサイドマンを務めているのもボッティ一座のぜいたくなところです。この曲ではベースのレジー・ハミルトンが抜け、ジョーイの左手がベース・ラインを奏でます。途中からすさまじいアップ・テンポになり、ドラムスのリー・ピアソンとジョーイの火の出るようなデュオ・パートが訪れます。その後はドラムの独り舞台です。ピアソンはまず鮮やかなスティックさばきで酔わせ、その後0.何秒かのブレイクの間に上着をサッと脱ぎ、いつしかロッドに持ち替え、さらにそれを手放して両手でタムを叩き、その後バスドラとハイハットを高速で踏みつつ手拍子を打ち、ラストに再びスティックを手にしてソロを締めくくりました。今のジャズ界はドラム黄金時代だと個人的には思っているのですが、テクニック、グルーヴ、ショウマンシップを兼ね備え、ここまで高度でありながらとことんわかりやすいソロを行なう奏者は、ぼくにとってリー・ピアソンしかいません。
ここまで2度"マイルス"という言葉が登場しましたが、ボッティにとって彼は永遠のヒーローなのでしょう。マイルスの名盤『Kind of Blue』からは2曲カヴァーされました。「Blue in Green」ではトランペットにミュートをつけて淡々とメロディを奏で(テンポが速くなってからはミュートをとって激しくプレイ)、やがてファンク調にアレンジされた「So What」へ。ハミルトンがスラップ奏法を盛り込んだベース演奏で盛り上げ、ジョーイが超高速のオクターヴ・ユニゾンを挑みかかるようにたたみかけます。続いてボッティは客席に入りこみ、「Over the Rainbow」をメロウに吹奏。この曲と、女性シンガーのサイ・スミスが参加した「In the Wee Small Hours」は静止画動画撮影OKナンバーでした。
さすがのエンターテイナーぶり、さすがの技巧、さすがの選曲。凄腕たちが約100分にわたって繰り広げる盛りだくさんのステージは、24日まで休みなく続きます。
(原田 2020 2.21)
Photo by Yuka Yamaji
2020 2.20 THU.
1st | |
---|---|
1. | SEVDAH |
2. | SOMEONE TO MATCH OVER ME |
3. | WHEN I FALL IN LOVE |
4. | EMMANUEL |
5. | YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS |
6. | BLUE & GREEN / SO WHAT |
7. | YOU ARE NOT ALONE |
8. | HALLELUJAH |
9. | SOMEWHERE OVER THE RAINBOW |
10. | IN THE WEE SMALL HOURS |
11. | EMBRACEBLE YOU |
12. | THRE WILL NEVER BE ANOTHER YOU |
13. | MOANIN |
2nd | |
1. | SEVDAH |
2. | SOMEONE TO MATCH OVER ME |
3. | WHEN I FALL IN LOVE |
4. | EMMANUEL |
5. | YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS |
6. | BLUE & GREEN / SO WHAT |
7. | YOU ARE NOT ALONE |
8. | HALLELUJAH |
9. | SOMEWHERE OVER THE RAINBOW |
10. | IN THE WEE SMALL HOURS |
11. | EMBRACEBLE YOU |
12. | THRE WILL NEVER BE ANOTHER YOU |
13. | MOANIN |
EC. | WHAT A WONDERFUL WORLD |