原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

この日、この時限りの美しい音楽の旅----------

ピアニストの上原ひろみが、「ブルーノート東京」に帰ってきました。去る8月25日から9月16日にかけて、ソロピアノによる計16日間32セットというロングラン公演を大成功させた彼女が、さらなる大ライヴ・シリーズに昨日から取り組んでいます。題して、"SAVE LIVE MUSIC RETURNS"。今回は年をまたぎ、計18日間36セットの開催です。

12月28日から2012年1月4日にかけては世界初演の「上原ひろみ ～ピアノ・クインテット～」、1月6日から10日にかけては前回のロングラン公演で惜しくも取り上げられなかった楽曲を中心とするソロ公演「上原ひろみ ～ソロ～」、12日から17日にかけて（14日を除く）は鬼才タップダンサーとのコラボレーション「上原ひろみ ～デュオ～with 熊谷和徳」。以上が、今シリーズのテーマです。収益の一部は「Newport Festivals Musician's Relief Fund」に寄付され、また、会場以外でも楽しめるように各プログラム、各ワン・セットの配信も行なわれます（1/4、1/8、1/15の2ndショウ）。

ぼくは初日（12月28日）の1stショウに足を運びましたが、もう「ブルーノート東京」は、はちきれんばかりの熱気です。上原ひろみのライヴに接することのできる嬉しさ、新プロジェクトへの期待などが、ファンそれぞれの中で醸成され、そのエモーションがメンバーの登場と共に、拍手として一気に爆発した印象を受けました。ピアノ・クインテットの顔ぶれは、西江辰郎（ファースト・ヴァイオリン。上原とは2015年新日本フィルハーモニー交響楽団との公演で共演）、ビルマン聡平（セカンド・ヴァイオリン）、東条慧（ヴィオラ）、向井航（チェロ）、そして上原ひろみ（ピアノ）。以前から暖めていた構想を、ついにライヴで繰り広げる時が来たのです。

上原ひろみはMCパートで、2020年を「とても変わった一年でした」と振り返りました。そしてステイ・ホームによって時間ができたこと、その時間を曲作りにあてたその結果、新曲が完成したことを伝え、一気呵成にその"新曲"に取りかかります。五者一体で突き進むかと思えば、ピアノと弦楽の対比を聴かせるパート、ピアノの低音とチェロが繰り広げるユニゾンの上で他の弦楽器が奔放に弾きまくるパート、アルコ（弓弾き）とピチカート（指弾き）を鮮やかに使い分けるパート、粋なコール＆レスポンスと、その展開は、文字通り千変万化です。向井航がピチカートで紡ぐ4ビートのラインにも耳を奪われました。

最後の音が空気に溶け込んだ瞬間、観客は総立ちとなって、この日最大の拍手を送りました。ジャズ、クラシック、ラテン（コロンビア出身のハープ奏者、エドマール・カスタネーダとのデュオ経験も大きいと思われます）を色彩感豊かに包み込んだ、新しい上原ミュージックの誕生といっていいでしょう。長期シリーズ"SAVE LIVE MUSIC RETURNS"は、これ以上ないスタートをきりました。ライヴ・シーン、ライヴを愛する音楽ファンへの熱いエールをこめて、上原ひろみの音楽の旅は続きます。
(原田 2020 12.29)

Photo by Takuo Sato

☆"SAVE LIVE MUSIC RETURNS"公演 特設ページ

☆18日間にわたり繰り広げられるロングラン公演。配信チケットも絶賛発売中！
(※3プログラム配信セット券の販売は、1.5 tue. 10:00pmまでとなります。)

12.28 mon.～1.4 mon. "PIANO QUINTET"
※生配信：1.4 mon. 2ndショウ (Start8:00pm)

1.6 wed.～1.10 sun. "SOLO"
※生配信：1.8 fri. 2ndショウ (Start8:45pm)

1.12 tue.～1.17 sun. (※1.14 thu. Off) "DUO"
※生配信：1.15 fri. 2ndショウ (Start8:45pm)

☆特別公演も決定！上原ひろみが東京からニューヨークへ贈るニューイヤー・プレミアム・コンサート
"New York New Year's Eve Countdown"
HIROMI ～SOLO～
- Benefit Concert for Blue Note New York from Tokyo -
1.1 fri. Start1:00pm