原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

3月25日に還暦を迎えたピアニスト、小曽根真がブルーノート東京、モーション・ブルー・ヨコハマ、コットンクラブを巡るツアー"OZONE 60 in Club"の初日を6月19日にブルーノート東京で開催。新プロジェクト"From OZONE till Dawn"のお披露目を行ないました。

地球をとりまくオゾン層から昇る光をイメージして命名されたという同プロジェクトを、ぼくは小曽根真による音楽への恩返しではないかと感じています。いわゆるアンダー・コロナになってから、ミュージシャンとリスナーがライヴの場でひとつになれる機会は格段に減っています。なかでも若手気鋭がオーディエンスの反応を受けて腕を磨く機会は、ベテラン・中堅のそれよりもいっそう少ないのが現実でしょう。そこで一計を案じたのが小曽根真です。"こんなに素晴らしい逸材がいるんだ、彼らの演奏をぜひ「良い耳の」観客にしっかり届けたい。それは若手たちにとってもまたとない成長の糧になるはずだ"。ゲイリー・バートン、チック・コリア、ロイ・ヘインズらとの出会いや共演によって鍛えられ磨かれ、躍進と挑戦を止めない小曽根だからこその、説得力に富むアイデアといえましょう（ぼくは古くからのリスナーなので、彼の国内デビューLPがベテランのトロンボーン奏者フィル・ウィルソンとのデュオ『ライヴ・アット・バークリー・パフォーマンス・センター』であったことも思い出します）。

プログラムの前半は20歳のウクレレ奏者、RIOとのデュオ。昨年、緊急事態宣言中に小曽根が53日間連続で行なった自宅配信が縁で交流を始め、その後6月に「ブルーノート東京」で初共演ライヴを行なったことをご記憶の方も多いと思います。そのプレイはメリハリに富み、表現力豊か。あの小さな4弦楽器から、こんなに粒立ちのいいアドリブが湧き出るとは。単音・コード・カッティングの使い分けも鮮やかで、新しいウクレレの魅力に気づかせてくれました。小曽根が"まるでオーケストラのようだ"と形容したのも納得です。中盤からはさらに1995年生まれのフルート奏者、片山士駿が加わります。音色の太さ、ロング・トーンの艶、演奏することが楽しくてしょうがないといった感じの表情、どれも胸のすく思いがしました。演奏レパートリーは、入魂のニュー・アルバム『OZONE 60』からの曲から古典的ナンバーまで実に多彩。ピアノ＋ウクレレ＋フルートという、なんとも不思議な、ジャズ界では前例がないといっていい組み合わせがスリルいっぱいのまま、スウィングし、グルーヴし、場内の熱気を高めていきます。

小曽根真とふたりのライジング・スターによる公演は、本日もブルーノート東京で開催されます（セカンド・ショウはライブ・ストリーミングあり）。その後、"From OZONE till Dawn"はメンバーを入れ替えて7月24日と25日にモーション・ブルー・ヨコハマ（ORGAN TRIO）、8月13日と14日にブルーノート東京（New Project Band　featuring "OKAZAKI BROTHERS"）、8月24日と25日にコットンクラブ（A Rose & The Beasts）へ登場。どのセットに足を運んでも、新しい才能、新しい音楽との出会いに胸がときめくこと間違いありません。
(原田 2021 6.20)

Photo by Takuo Sato

☆"From OZONE till Dawn" 公演特設ページ

☆LIVE INFORMATION

小曽根真 "OZONE 60 in Club"
New Project "From OZONE till Dawn"

■PartⅠ. Duet with RIO
Special Guest：片山士駿
6.19 sat., 6.20 sun.　ブルーノート東京
※6.20 sun. 2ndショウ(Start6:30pm)では生配信(有料)を行います。

■Part II. ORGAN TRIO
featuring 山岸竜之介＆小田桐和寛
Guest：中山拓海
7.24 sat., 7.25 sun.　モーション・ブルー・ヨコハマ

■PartⅢ. Makoto Ozone New Project Band
featuring "OKAZAKI BROTHERS"
8.13 fri., 8.14 sat.　ブルーノート東京
Member：岡崎好朗(tp), 岡崎正典(sax), 中林俊也(sax), 佐藤潤一(b), きたいくにと(ds)

■PartⅣ. "A Rose & The Beasts"
featuring 石川紅奈 & DENNIS FREHSE
Special Guest：曲輪大地
8.24 tue., 8.25 wed.　コットンクラブ