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RON CARTER GOLDEN STRIKER TRIO

artist RON CARTER

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


去る5月4日に満85歳の誕生日を迎えたベースの巨星、ロン・カーターが約3年ぶりに「ブルーノート東京」に出演しています。2020年9月には「ブルーノート・ニューヨーク」から無観客配信スペシャル・ライヴ"Live Streaming from Blue Note New York"を届けてくれたのも記憶に新しいところですが、今回はもちろん有観客による至近距離でのパフォーマンス。前述の配信ライヴと同じく、ラッセル・マローン(ギター)、ドナルド・ヴェガ(ピアノ)との----もはや鉄壁といっていいでしょう-----"ゴールデン・ストライカー・トリオ"によるステージです。

割れんばかりの拍手に導かれるように、3人の紳士が登場します。それぞれが定位置につき、まるでクラシック・コンサートのように楽器のチューニングを始めると、客席は水を打ったように静かになります。メンバーが演奏に、観客が鑑賞に集中していくための、実に美しい"間"です。1曲目は「Eddie's Theme」。ロンの持つメロディアスでロマンティックな一面がとてもよく表れたオリジナル・ナンバーです。彼らの演奏は、口調に例えるならば、決して声高に何かを主張したりするタイプではありません。抑え気味の口調でじっくりと、巧みに聴く者に語りかけてゆく。ニュアンスに富んだフレーズのひとつひとつに、つい耳をそばだててしまいます。

この曲をプレイした後、ロンは「このステージを、2日前に亡くなったプロデューサーのクリード・テイラーに捧げます」と言いました。テイラーとロンの交友は、筆者の知る限りギル・エヴァンスのインパルス盤『クールからの脱出』(60年)に始まります。テイラーはやがてヴァーヴやA&Mといったレコード会社に引き抜かれ、自身のレーベル"CTI"を設立してさらに飛翔するのですが、その間、実に多くのプロジェクトでロンのベースが鳴り響いていました。たんなるプロデューサーとミュージシャンという関係にとどまらない、"クリエイティヴな音楽をつくる同志"的な気心の通じあいがあったのでしょう。

今から100年も前に作られた「Limehouse Blues」のような、残念ながらあまり顧みられなくなった楽曲に光を当てるのも、このトリオの魅力です。ワルツ・タイムと2ビートを交互に出しながらテーマ・メロディを提示した後、スウィング感を全開にしたアドリブ・パートに突入します。ラッセルのギター・カッティングは猛烈なリズム感にあふれていて、熱演を終えようとする彼にロンが「もう1コーラス続けてくれ」と指示するシーンもありました(当然、客席は大盛りあがりです)。ドナルドのピアノは「My Funny Valentine」で、タッチの美しさとリハモナイズ(和音の付け替え)の鋭さ、その奏法を存分に堪能させてくれました。いっぽう、「Black Orpheus」(「カーニバルの朝」ではなく、「オルフェのサンバ」のほう)はロンのショウケース的一曲に。よほど乗っていたのか、アドリブに「Moody's Mood」、「Chicago」、「Stranger in Paradise」等のメロディが引用され、長大なカデンツァではバッハ(ロンが大尊敬する作曲家です)の「無伴奏チェロ組曲」まで飛び出しました。

トリオの発足を告げたアルバム『ゴールデン・ストライカー』の録音から20年、ドナルド・ヴェガの参加から9年。ゴールデン・ストライカー・トリオの音楽は、ますます熟成・発展を続けています。公演は28日まで行われます(28日のセカンド・セットは有料配信あり)。

(原田 2022 8.26)

Photo by Takuo Sato


☆最終日8.28 sun.の2ndショウでは生配信も!
RON CARTER
GOLDEN STRIKER TRIO
2022 8.25 thu., 8.26 fri., 8.27 sat., 8.28 sun.
※8.28 sun. 2ndショウのみインターネット配信(有料)実施
※配信チケット販売期間:8.28 sun. 9:00pmまで
※アーカイブ配信視聴期間:8.31 wed. 11:59pmまで
詳細はこちら

SET LIST

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2022 8.25 THU.



































































1st
1. EDDIE’S THEME
2. CEDAR TREE
3. OPUS 5
4. LIMEHOUSE BLUES
5. MY FUNNY VALENTINE
6. BLACK ORPHEUS
7. GOLDEN STRIKER ~ SOFT WINDS
EC. THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU
 
2nd
1. PARADE
2. CANDLE LIGHT
3. LAVERNE WALK
4. AUTUMN LEAVES
5. EDDIE’S THEME
EC. THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU

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