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STACEY KENT

artist STACEY KENT

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


"ジャズ・ソングバード"の異名をとる歌姫ステイシー・ケント、ちょうど3年ぶりの日本公演が始まりました。いつも趣向に富んだラインナップで極上のひとときを届けてくれるステイシーですが、今回は最新作『Songs From Other Places』で絶妙なデュオを聴かせたピアノ奏者アート・ヒラハラ(ビョークの楽曲をジャズ化する"ビョーケストラ"の一員でもありました)、テナー・サックス/ソプラノ・サックス/フルート/アルト・フルート/パーカッション/アレンジャーを兼ねる夫のジム・トムリンソンとのトリオで、よりいっそう親密度の増したステージを繰り広げています。

「ギターもベースもドラムもない編成だから、バラード中心のセットリストになるのかな」と予想しつつ開演を待ったのですが、オープニングに登場したのはアントニオ・カルロス・ジョビン作の快活な「Corcovado」でした。ヒラハラがボサノヴァ・ギターの刻みを鍵盤におきかえたような歯切れ良いピアノ・タッチを奏で、スタンドマイクの前に立ったステイシーは全身でリズムをとりながら歌います。夫君のジムはアンサンブル部分でアルト・フルート(通常のフルートより、太く低めの音が出る)、ソロ部分でテナー・サックスへと持ち替えながら、ステイシーの歌に相槌を打つようにフレーズを紡ぎます。たしかに異色の編成とはいえ、まったく過不足はありません。まさに「百聞は一見にしかず」です。

ステイシーといえば、英国の小説家であるサー・カズオ・イシグロ(2017年にノーベル文学賞受賞)との交友もよく知られていることでしょう。イシグロの作詞、ジムの作曲、ステイシーの歌唱というコンビネーションで、数々の印象的なナンバーが生まれて現在に至りますが、この夜は「Waiter, Oh Waiter」、「Tango In Macao」(途中、タンゴ調からワルツになるアレンジも抜群)、新幹線をテーマにした「Bullet Train」などを披露。後者では東京、名古屋、ベルリン、ニューヨークなど都市の名が歌詞に盛り込まれ、そのつど、会場が沸きました。初日ファースト・セットでは、ほかにもバート・バカラック作「Alfie」、ビートルズ(ポール・マッカートニー作)の「Blackbird」、シャンソン「Ne me quitte pas」の英訳「If You Go Away」、ポルトガル語によるジョビン「Águas de março」など幅広いレパートリーが次々と、ステイシーならではの軽やかな歌声、洒落たアレンジで新鮮に解釈されてゆきました。

選曲は各セットによってかなり異なるものになりそうとのことなので、いったいどんな曲を耳にできるのか、思いっきり楽しみに来場するのも一興でしょう。公演は16日まで開催されます。親日家ステイシー、会心のステージをぜひごらんください!

(原田 2022 10.15)

Photo by Yuka Yamaji


●ステイシー・ケント公演は10月16日(日) まで!
STACEY KENT
2022 10.14 fri., 10.15 sat., 10.16 sun.
詳細はこちら


SET LIST

2022 10.14 fri.
1st
1. Corcovado
2. Tango In Macau
3. If You Go Away
4. Lucky To Be Me
5. I Wish I Could Go Travelling Again
6. Bonita
7. Bullet Train
8. Alfie
9. Blackbird
10. Waiter, Oh Waiter
11. Les Voyages
12. Les Eaux De Mars (Água de Março)
EC. Smile
 
2nd
1. Paris Skies
2. Tango in Macau
3. Lucky To Be Me
4. Bullet Train
5. Bonita
6. I Wish I Could Go Travelling Again
7. La Valse des Lilas
8. Carinhoso
9. Blackbird
10. Time for Love
11. Les Eaux de Março (Água de Março)
EC. What A Wonderful World

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